母乳育児 悩み受け止め29年

朝日新聞
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 「我が子を母乳で育てたい」という気持ちに寄り添おうと、
母親同士が立ち上げた団体が横浜市で活動を続けている。
無料の電話相談「母乳110番」では、全国の母親の悩みを受け止めてきた。
来年の設立30年を前に、11月2日には育児フェスタを開く。

 「卒乳は10人いれば10通り。ご飯を食べたいだけあげれば、
安心して離れていくんじゃないかな」

 横浜市南区の事務所で、竹中恭子さん(55)らが次々と相談の電話に応じる。
1985年から続く育児サークル「よこはま自然育児の会」では、
電話相談を92年から受け続けてきた。
「母乳が十分出ているか不安」「職場復帰するが授乳はどうすれば?」といった悩みが、
年間80件ほど寄せられる。

 母乳育児の大切さを伝えようと、1人の保健師が西区で立ち上げた
母親学級が会の始まりだった。
予防接種や離乳食などの情報を伝える会報を発行。
講演会を開くなど、子連れの母親たちが活動を広げてきた。

 当初は各年度の代表の自宅を会の連絡先としていたが、
「母乳育児に詳しいらしい」と相談電話が殺到し、専用の回線を設けた。
研修を受けた育児経験者ら15人ほどが相談員として電話を受けるようになった。

 出産すれば当然と思われがちな母乳育児だが、
産後に分泌されるまで時間がかかったり、
乳腺が詰まって激痛に襲われたりと、実はトラブルや個人差がつきもの。
助産師や保育士、世代間でアドバイスが異なって悩む人や、
ミルクしかあげられなくて「母親失格」と自分を責める人もいる。

 20年以上の相談の中では、「今すぐこの子をマンションの窓から投げ捨てて、
私も死ぬ」と口にした母親もいた。近年は何時間もネット上で調べ、
多すぎる情報に逆に追い詰められる人も増えている。
電話でよくよく話を聞き、「こんな例やあんな例もある」と体験を交えて伝えると、
次第に納得してくれることが多いという。

 「昔なら井戸端会議で解決したかもしれないことが、
母親にとって巨大な問題になってしまう」と竹中さん。
「私たちの活動は、迷った心の整理と、解決の糸口を提案すること。
母親同士の小さな活動だが、細く長く続けていきたい」

 110番(080・5413・8033)は祝日と第5週を除く金曜午前10時~正午。
11月2日午前11時からは、横浜市市民活動支援センター(中区)で
30周年記念の「よこいく祭」を開催する。
ベビーマッサージやワークショップなど。
詳細はホームページ(「よこはま自然育児の会」で検索)へ。
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