「今なら発見できた」と自治体 進む対応、DV調査には課題

産経ニュース
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 厚労省が行った初の実態調査では、
自治体の部局間の連携があれば虐待の芽を摘める可能性があることを示した。
幼い子供が犠牲となった経験を持つ自治体では、
今回の調査以前から再発防止策を進めており、一定の成果を上げている。

 「今のシステムなら問題が洗い出され、
事前に発見できたかもしれない。それが悔やまれる」

 愛知県豊橋市の子育て支援課の担当者はこう話す。
同市内では平成24年9月、アパートで女児=当時(4)=が衰弱した状態で見つかり、死亡。
両親の育児放棄が原因だった。

 市が異変を察知できる機会はあった。
女児は乳幼児検診を受けておらず、小学校に入学しているはずの兄も未就学。
それぞれ所管する保健所や市教委担当者による家庭訪問では接触できなかった。
一方、両親は児童手当を受給、定期的に市役所を訪れていたが、
所管する子育て支援課は子供が所在不明という事実を把握していなかった。

 この反省に立ち、市では乳幼児検診、就学、予防接種、児童手当受給の有無など、
バラバラだった担当部署の情報を一元化。
イントラネットで情報を共有できるシステムを整備した。
乳幼児検診を受けず、接触困難な家庭を重点的に訪問する
「ハイリスクケース」専任の保健師数人も配置した。
現在も所在不明の子供が1人残るが、
担当者は「組織に“横串”を通し、必ず確認するまでやるという意識が大切。
決して難しいことではない」と話す。

 昨年4月、虐待を受けて女児=当時(6)=が死亡する事件が起きた横浜市でも
今年度から部局間の連携を強化。
所在が確認できない子供が外国籍の場合は入国管理局に照会したり、
戸籍から親族を把握して調査をしたり、
生活保護受給家庭に含まれていないかなどを調べてきた。
5月1日時点で143人だった所在不明の子供は3人にまで激減した。

 課題も見えてきた。ドメスティックバイオレンス(DV)が原因で
親子で別の自治体に移転した場合、住民票を元の住所にしておくケースが多い。
しかし転出先が分からないと調査が難しく、
居所が分かっても自治体同士が連絡を取り合うと、
配偶者に居所を知られたくない親子の不安は増す。
横浜市は「情報を仲介する第三者がいれば、
自治体名を明かさず『今いる自治体で元気でやっている』
という情報を共有することができる」と指摘する。



医師でNPO法人「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」
の山田不二子理事長(54)の話

 「所在不明児が半年で大幅に減少したことは自治体の成果といえる。
今後は先進的な取り組みを行う自治体を基準にした上で、
国が所在不明児の『情報管理・照会システム』を創設するなどし、
現住所を特定せずに、自治体間での安否確認を可能にする仕組み作りが必要ではないか」
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