「がん教育」で健康への意識身に付ける

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 日本人の死因で1位のがんについて理解を深める
「がん教育」が学校現場で注目されている。

 正しい知識を持つことで、将来望ましい生活習慣を身につけ、
検診に対する意識を高めることなどが期待されている。

死亡の実態、予防策…抗がん剤治療に携わる医師が解説

 「がんってどんなイメージ?」――。
10月中旬、京都府綾部市立綾部小学校で、
6年生約100人を対象に行われた特別授業。
国立病院機構京都医療センター(京都市)で
抗がん剤治療などに携わる医師、安井久晃さん(42)が問いかけると、
児童らは「苦しい」「死んでしまう病気」などと次々に発言した。

 安井さんは画像を示し、がん細胞が体の様々な部位にできることや、
日本人の2人に1人はがんになり、
3人に1人ががんで亡くなっている実態を伝えた。

 遺伝によるがんの割合は少ないことのほか、
「たばこを吸わない」「野菜や果物をバランス良く食べる」といった
予防策も分かりやすく例示。「それでも完全に防ぐことはできない。
早い段階で見つけられれば、治る可能性が高まる」と説明すると、
児童らはうなずいていた。

 京都府は昨年度、がんに詳しい医師らとがんの経験者による授業を始め、
小中高20校で行った。今年度は100校での実施を目指す。
胃がん告知された元教諭、手術の経験語る

 同小にはこの日、府の「がん教育推進メッセンジャー」を務める
元中学校教諭、井上文雄さん(64)も訪問。
2年前に胃がんを告知されて手術を受けた経験を語り、
「医師には『いい時(早期)に検診に来られましたね』と言われ、
冷静に受け止めることができた」と振り返った。

 授業を受けた大杉歩君(11)は「がんは怖いけれど身近な病気。
親に検診を勧めたい」と話した。
授業を参観していた母親(40)は乳がんの経験があり、
「子どもの頃から知識を持つことは重要。
生活習慣に気をつけるきっかけになる」と語った。

 厚生労働省によると、がんは1981年から死因の1位で、
昨年は36万4872人が死亡。
一方、昨年の調査で、がん検診の年間受診率は肺がんで38.7%、
胃がんで36.7%にとどまる。

がん教育「不十分」指摘…21自治体をモデルに推進
 がんに対する意識を高めようと、国は12年度に策定した
「がん対策推進基本計画」で、がん教育の推進を盛り込んだ。
現行の学習指導要領は、小学校高学年、中学3年、
高校の保健分野で生活習慣病の一つとしてがんを取り上げているが、
「不十分」と指摘された。

 このため、文部科学省は今年度、
全国21の道府県・政令市をがん教育のモデル自治体に指定。
今後、有識者会議でがん教育の事例を研究し、
教材の開発や人材の活用法などを検討する。

 先進地の東京都豊島区では12年度から、小6、中3を対象にがん教育を導入。
がんの体験談を収録した教材や指導手引を作成し、
教員研修も実施。担任と養護教諭が連携して授業を行う。

 また、国立がん研究センターは昨年度、
学習まんが「がんのひみつ」を作成した。電子書籍も無料で閲覧できる。
「子どもの頃から正しい知識を身につけ、
検診の大切さや、治療して職場復帰する人も多いことを知ってほしい」
と同センター予防・検診普及研究室長の溝田友里さんは話す。(桜木剛志)
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