手術後のケア 頑張った子、ねぎらう手紙

yomiDr.
------------------------------------------------------------------------------------------------
立ち会った看護師「成長の糧にして」

 心身が発育途中の子供にとって手術は一大事だが、
手術が終わったら、困難を乗り越えた経験を前向きに捉え、成長の糧にしてほしい――。

 そんな思いで、手術に立ち会った看護師が、
子供や家族にメッセージを送る「術後ケア」の取り組みが進んでいる。

 「大好きな『アナと雪(の女王)』の音楽を聞きながら麻酔導入となりました。
無事に終わって良かったですね。ななえちゃんも本当に頑張ってました……」

 先月17日、手術室から出て来たななえちゃん(1)の傍らに、
そんな言葉が記されたメッセージカードが添えられていた。

 母沙織さん(33)は「大きくなったら本人に見せてあげたい。
いろんな人が心配してくれて、あなたもがんばって大きくなったんだよって伝えたい」と語る。

 ななえちゃんが受けたのは、背中のあざを取る手術だったが、
家族は「小さい体に全身麻酔なんて」と心配した。
それだけに、「くまのぬいぐるみを、ぎゅっと握りしめて、とてもかわいらしかった」など、
手術室での様子が記されたカードにほっとした。

 東京都立小児総合医療センター(府中市)では
2012年末頃から、手術を乗り越えた実感を持ってもらえるよう、
子供本人や家族にメッセージを送る取り組みを始めた。

 従来、手術の前に、手術室の担当看護師が病室訪問し、
子供や家族と話し合うことは広く行われている。
事前に手術の段取りを説明し、少しでも緊張をほぐせるよう、
吸入する麻酔の香りや手術室で流す音楽を選んでもらったりする。
ただ、手術後、手術室の看護師がさらにコミュニケーションを取ることはまれだ。

 こうした術後の取り組みを提案したのは、手術室の看護師、川島由香さん(33)。
背景には、4年前に担当した男児の
「手術してからメロンを食べられなくなった」という言葉がある。

 男児は吸入麻酔に付ける香りにメロンを選んだ。
「メロンが好きだったから選んだのに、術後に避けるようになったのは、
手術を『嫌な体験』と捉えてしまったからでは」と気になった。
そして、「困難を乗り越えたことをプラスの体験にしてもらえたら」
とメッセージを送ることにした。

 「かえってつらい思いをぶり返させるのでは」などの懸念もあったが、
最初に一部の病棟で試行したところ、意外に好評だった。

 メッセージは本人へが基本だが、乳児や幼児の場合は家族に送る。
この試みを始めてから、退院時に記入してもらうアンケートに、
「手術の様子は親には分からないのでお手紙をいただいて、うれしかった」
「もらったカードを子供がベッド横に大切に飾っていました」などの声が寄せられた。

 退院まで時間があれば直接会話することもある。
「聴診器が冷たかったけど、我慢した」などと、
看護師と率直に話すうちに「楽になった」という子もいる。

 ただ、本来の手術業務が忙しく、術後訪問は一部にしか行えない。
その代わり、手術後にカードを送る取り組みは、一般病床全体に広げている。
川島さんは「同様の取り組みが全国に広がれば、うれしい」と語る。(高橋圭史)
 手術室の看護師 
 患者の手術に立ち会う看護師は通常、
入院中に病室で顔を合わせる病棟担当看護師とは別の、手術室担当の看護師。
手術に立ち会った看護師が、
手術が終わった患者にメッセージを送ったりすることは少ない。
------------------------------------------------------------------------------------------------