認可園移行、高いハードル 運営者に重い負担

河北新報
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仙台市は、来春始まる「子ども・子育て新制度」に伴い、
無認可保育園を市独自の設置要件で認証、助成する「せんだい保育室」を、
2017年度末で廃止する。62ある保育室はそれまでに、
認可園か定員19人以下の小規模保育事業所へ移行し、
新制度の中で運営を継続する予定だ。ただ認可園移行には、
基準を満たすための大規模な施設改修や移転、
運営資金確保が必要になり、関係者が頭を痛めている。(生活文化部・越中谷郁子)

<継続へ署名集め>

 17年4月に認可園移行を目指す朝市センター保育園(青葉区・定員60人)は、
JR仙台駅前のせんだい朝市通り沿いのビル5階にある。
市は当初、パチンコ店が近いため認可に難色を示したが、
約2万人の署名の提出を受けて方針を転換、
園は現在地での認可園移行が可能になった。
 しかし、安達喜美子園長の顔はさえない。
施設改修費をどう工面するか悩んでいるからだ。
0歳児1人当たりの面積を現在の3.3平方メートルから5平方メートルに広げ、
5階で運営するには各階の階段に避難設備として排煙機能を設けなければならない。
入居ビルの2、3階への移転も視野に入れ、設計図を検討中だ。
 費用は約2700万円を見込む。4分の3は国と市から補助が出るが、
残り4分の1の約700万円は自己負担。
安達園長は「街中の工事は制約が多く費用が膨らむ。借り入れも覚悟している。
でも朝市にあるからこそできる保育がある。
執念を持って園を継続させたい」と力を込める。

<工事に1ヵ月超>

 2階建てマンションの1階に入居する
「ちゃいるどらんど岩切駅前保育園」(宮城野区・定員59人)も、
0歳児の床面積の拡大が必要だ。
ほかにもオープンスペースにしていた部屋を仕切り、
車いす用トイレ、各保育室に手洗い場などを設置しなければならないため、
改修は大規模になる。
 運営する株式会社ちゃいるどらんどの大木俊則代表取締役は
「工事に1カ月以上かかる。費用に加えて、その間の仮設園をどうしたらいいか」と悩む。
仮設園建設の場合、簡易的なものとはいえ約2000万円かかるという。
近くの児童館を借りるなど建設を回避できないか方策を探る。

<相談機能を強化>

 関係者にとってもう一つの壁は、安定運営のための自己資金だ。
社会福祉法人以外の経営者の場合、賃借物件に入居していると、
年間運営費の12分の1に加えて家賃1年分とさらに1000万円が必要になる。
これらの資金は借り入れすることはできない。
 ある保育園園長は「ギリギリの運営でやってきた。
改修費とさらに1000万円まで移転初年度に求められるのはつらい」と吐露する。
別の関係者は「新規参入するわけじゃない。
市はこれまでの実績を見て負担軽減策を考えてほしい」と注文した。
 市は担当職員を増やすなどして相談機能を強化している。
保育指導課の古山徳子課長は「こちらからもさまざまな提案をしながら、
移行を全面的に支援していきたい」と話した。


[せんだい保育室] 
A型とB型がある。
1人当たりの床面積基準はA型が0歳児、1歳児3.3平方メートル以上で、
B型は2.475平方メートル以上。
保育従事者はA型が全員保育士などの有資格者、
B型は3分の2以上が有資格者であればよい。
待機児童解消のため、2002年に導入された。
15年4月に6園が認可園へ、10園が小規模保育事業所へ移行する。
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