震災の園児犠牲、一部遺族と和解 保育所の津波訴訟

日本経済新聞
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 東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県山元町立東保育所の
園児2人の遺族が、町に計約8800万円の損害賠償を求めた訴訟は
24日、仙台高裁(中西茂裁判長)で、園児1人の両親と和解が成立した。

 町が和解金計300万円を支払うほか「保育中の子が死亡したことを重く受け止め、
心より哀悼の意を表し、今後、園児らの安全な保育に努める」との内容。

 和解したのは、長男の歩夢ちゃん(当時2)を失った渋谷亮さん(31)ら両親。
もう1人の園児の親の請求には、来年3月20日に判決が出る。

 渋谷さんは成立後の記者会見で、
和解内容に「安全な保育に努める」と記されたことを評価し
「文言は決まり切ったものだが、当たり前のことがおろそかだったからこういう事故が起きた。
もう一回、初心に戻って保育をやってほしい」と述べた。

 山元町は「町に賠償の義務があるとは考えていないが、
園児が亡くなった事実を厳粛に受け止め、
和解を決意した」とのコメントを出した。

 一審の仙台地裁判決によると、2011年3月11日の地震発生後、
東保育所では当時の町総務課長の指示で、園児を園庭に待機させた。
発生の約1時間15分後、押し寄せる津波に気付き車で避難したが、
途中で流され園児3人が死亡した。
一審判決は「津波到達を予測できなかった」と請求を退け、遺族側が控訴。
高裁が和解勧告していた。

 提訴しなかった園児1人の遺族は、裁判外紛争解決手続き(ADR)で、
今回と同額の計300万円を町が支払うことで和解している。〔共同〕
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