(4)「教員の卵」高校で養成…大量退職控え

YOMIURI ONLINE
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 8年前、全国で初めて教育コースを設けた奈良県立平城、
高田両高校では、それぞれ1学年40人の教員志望者が学ぶ。

 「みんなは今のままでは中学生になれません」

 奈良市立佐保台小学校6年生の教室。平城高教育コース
2年、藤井はるかさん(17)の厳しい声が響くと、
児童の顔から笑みが消え、背筋がピンと伸びた。
11月中旬、同高の2年生が地元の五つの小学校に分かれて行った
3日間のインターンシップ(就業体験)。
最終日の授業で後片づけを題材にした絵本を読み聞かせ、
掃除が不十分だったことへの反省を促した。

 「自覚や責任を持つ大切さを伝えたかった」と藤井さん。
授業後、児童らは「藤井先生は普段は優しい。
自分たちのことをちゃんと見てくれる」と語り、信頼関係が深まったようだ。

6割以上が教員養成系大学へ進学

 同コースは、県教委が2006年度に開設。
第2次ベビーブーム対策で採用した教員の定年に伴う大量退職で、
県内でも小中学校の教員の退職者数が年間300人以上になるのを控え、
「早い段階から質の高い教員を育てるのが狙いだった」と担当者。
高校入試では2高とも定員を上回る人気が開設当初から続く。
卒業生の教員養成系大学への進学率は平城高が6~8割。
高田高も7~9割で推移する。

 平城高では、週2、3時間、教育に関する授業があり、
奈良教育大など7大学との連携講座では大学教員からわかりやすい教え方などを聞く。
1期生の約半数が昨春、大学を卒業して
同県内の公立学校の教員になった。
小学校教諭2年目の森本浩子さん(24)は
「教育コースでは人前で発表する機会が多く、実践的な力がついた」。
一方、出井里奈さん(24)は専門学校に進み、
鍼灸しんきゅうマッサージ師として県内の総合病院で働く。
「養護教諭になりたくて高校に入学したが、
幅広い世代の体の弱い人の力になりたいという気持ちが強くなった」と話す。

 奥田秀紀・平城高校長(58)は
「教育コースで学んだ人との関わり方は進路が変わっても役立つ。
教員志望の卒業生は大学でさらに学びを深め、
他の学生に刺激を与えている」と語る。
高校と大学で実質7年間学んだ教員が、
学校現場でどのように力を発揮するのか。成果がわかるのはこれからだ。

今後10年続く大量退職…教員の質確保に苦心

 文部科学省の調査によると、教員の大量退職は
今後10年ほど続く見通しで、自治体は質の高い教員の確保に苦心している。
奈良県の2高の開設後、教員養成を意識したカリキュラムを組む高校が増加。
「教育ルネサンス」では、平城、高田両校の教育コースの始動(2006年8月)や
卒業を控えた同コース1期生(2009年1月)を取り上げた。(桜木剛志)
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