乳幼児の入浴 目離さず…ほんの1分が危険

yomiDr.
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もく浴を卒業した乳幼児と一緒にお風呂に入るのは、楽しいひと時だ。
しかし、入浴には大きな事故につながる危険も潜む。
子どもの成長や場面に応じて危険を先読みし、目を離さないようにしたい。

 東京都内の会社員女性(35)は今春、
1歳2か月の長女と入浴中にヒヤリとした経験がある。
自分が洗顔する間の1、2分、長女に浴槽のへりをつかませていたら、ドスンと音がした。
見ると長女が転んでいた。「浴槽に落ちていたら溺れていたかも」と話す。
以来、自分の洗髪や洗顔は夫の帰宅後にすることにした。

 子どもを事故から守る啓発活動に取り組む、
「緑園こどもクリニック」(横浜市)院長の山中龍宏さんは、
「つかまり立ちを始めたり、歩き始めるようになったりした子どもは、
予期せぬ動きをする。入浴中は特に目を離さないで」と話す。

 事故の中でも最も深刻なのが、浴槽で溺れるケースだ。
最近の浴槽は誰でも入りやすいようにへりの高さを抑える傾向にあり、
高さ45~50センチ程度のものも珍しくない。
山中さんによると、身長70~75センチの子どもが身を乗り出せば、
転落する危険は十分にある。「口や鼻が水につかった状態が5分続くと、命にかかわる。
洗髪などで目を離したままでいるのは危険」と警告する。

 同じ理由から、小さい子どものいる家庭では、
浴室のドアにかぎがある場合は施錠する。
入浴後はお湯を抜いておいたほうがよい。
子どもが1人で浴室に遊びに行き、溺れてしまう事故も起きている。

 また、入浴時に首に巻いて使う「首浮輪」を付けた子どもが溺れる事故も相次いでいる。
こちらは、歩き始める前の生後数か月の乳児が、主に事故に遭っている。

 首浮輪はC字状で、乳児の首を入れ、
開口部をベルトで固定する仕組み。
あごを浮輪に乗せて浮いた状態になる。
だが、空気が十分に入っていなかったり漏れたりして顔がずれ落ち、
鼻までお湯につかって溺れた事例が日本小児科学会などに報告されている。
中には重体になったケースもあった。
事故が相次いだことから、消費者庁などは2012年7月と今年10月に
「目を離さず正しく使用を」と注意を呼びかけた。

 そもそも、子どもに長湯は必要ない。四谷川添産婦人科(東京)の助産師、
小野貴代さんは「体の大きさを考えれば2、3分でも十分」と話す。
入浴時間を短くすれば、その分、事故のリスクは減る。

 子どもの体を洗う際も注意がいる。泡で滑りやすくなるからだ。
今月5日、新米ママ・パパ向けに都内で開かれた
「はじめてのお風呂セミナー」では小野さんらが講師を務め、
タオルを使う方法を指南した。
浴用いすに腰掛けて膝の上にタオルを広げ子どもを寝かせると、
せっけんを使っても滑り落ちにくくなる。

 いずれにせよ、親が目を離すのが一番の問題。
夫婦がそろっている時は、なるべく一緒に入浴し、
どちらか一方が必ず子どもを見るようにしたい。
親が1人の時は、自分の洗顔は入浴時でなく洗面台で行うなどの工夫をしてもよいだろう。


 ■入浴に際し子どもから目を離した隙に起きた事故例

 ・子ども用浮輪(足を入れて座るタイプ)を使用。
親が着替えを取りに浴室を出て、1、2分後に戻ると、
浮輪がひっくり返り子どもが沈んでいた

 ・脱衣所で親が自分の服を脱ぐ間、子どもを洗濯機の上に乗せた。
転落し頭蓋骨骨折

 ・親が体を洗っている最中に、子どもが蛇口から直接水を飲もうとした。
蛇口に奥歯が挟まり抜けてしまった(山中さんの話を基に作成)
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