<くらしを守る>高額化する教育費 節約を重ねて学費捻出

東京新聞
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 家庭の教育費が膨らんでいる。
特に大学生を持つ親の負担は重い。奨学金を利用する大学生の比率は5割を上回り、
奨学金の返済に苦しむ非正規雇用の若者も多い。
政治はこうした現状を変えられるのだろうか。 (白井康彦、寺本康弘)

 「いよいよ教育費のヤマが来たか…」

 三重県の女性(54)は今年一月、家計の予算立てをしていて、
教育費の跳ね上がりを実感した。
家族は会社員の夫(50)と娘二人。
当時、長女(21)は北陸にある国立大の文系三年生、
次女(19)は高校三年生。
次女は四月、九州にある私立大の理系に入学した。
一年間の教育費は計六百万円に上る。

 長女の授業料は五十三万円、次女の入学金と授業料は百五十六万円。
毎月の生活費は、家賃を含めて各十万円でやりくりしてもらっている。
それでも一年で計二百十三万円かかる。

 加えて長女は就職活動があり、名古屋や東京などである会社説明会に参加するため、
交通費などが半年で二十一万円かかった。
次女は入学時にパソコン購入費十五万円も必要だった。

 夫の手取り月収は約三十八万円。
今年の収支は百八十万円を超える赤字だ。
それでもこれまでの貯金でやりくりできた。
子どもが小さいころに参加した家計講習会で、
大学費用の大きさを学んでいたからだ。
「お金は急にはためられない。小中学生のころがため時」と言われた。
できるだけ外食はしない、洗剤は購入せず重曹で洗うなど、節約を重ねた。
子どもの習い事は本当にやりたいというピアノだけで、塾も通わなかった。
苦労はしたが「娘たちの輝く姿を見ると、本当によかった」と感じている。

     ◇

 教育資金は住宅、老後と並ぶ三大資金だ。
東京で活動するファイナンシャルプランナー、八ツ井慶子さんは
「統計的には幼稚園から大学までずっと私立だと二千二百万円。
公立でも八百万円。将来の教育費を気に掛け、
『もう一人子どもを持てますか』と相談に来る人もいます」と話す。

 家計に余裕がなく、教育資金をためられなかった場合は奨学金がある。
だが、国内に給付型の奨学金は少なく、
広く利用されている日本学生支援機構の奨学金は、
返済しなければならない貸与型だ。

 愛知県内の男性(24)は社会人二年目。
非正規の勤め人で、手取り月収は十三万円。
現在、奨学金の返済残高は約三百八十万円(利息分は除く)。
家庭はもともと裕福ではなく、県内の私立大に入学当初から奨学金を借りた。
在学中に父親が経営する会社の業績が悪化し、自宅は他人の手に。
一人暮らしを始めたため、生活は苦しくなった。

 社会人となって半年後の昨年十月、月一万五千円の返済が始まった。
すぐに生活は立ち行かなくなり、今年に入って返済猶予の申請をした。
ただ、猶予は最大で十年。いつかは再開しなければならない。
それから返済が二十年近く続く。
男性は「返済が順調に進んでも、完済できるのは四十五歳ごろ。
子どもがいたら、その子が大学に行くころ」と苦笑いする。
男性の願いは「なんとか正規として採用されること」と切ない。
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