(7)民間出身の校長、学校の内外つなぐ

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 教育改革のけん引役と期待された民間出身校長。
その広がり方は、地域によって差がある。

 2003年度に東京都内の公立小中学校で初の民間出身校長が誕生した杉並区立和田中。
リクルート社出身の藤原和博さん(59)と代田昭久さん(49)が
いずれも5年間ずつ校長を務めたが、
13年度に教員出身の末吉雄二校長(59)になった。

大学生ボランティア、塾の夜間授業…「学校は校長次第で変わる」

 11月中旬の土曜日の午前中、和田中の教室で「土曜寺子屋」があった。
大学生らのボランティアが生徒約40人に、それぞれの苦手教科を丁寧に教えた。
次男(13)が通う森愛音子さん(43)は
「土曜の朝から勉強を見てくれるのはありがたい」と喜ぶ。

 04年度にスタート。学力面で課題のある生徒が多く、
当時校長だった藤原さんが発案し、住民らで地域本部を設置し、運営。
塾による有料の夜間授業「夜スペシャル」も07年度末から続けている。
本部長の衛藤寿一さん(65)は「学校は校長次第で変わることを教えてくれた」。

 末吉校長は藤原さんらを副校長として支えた経験があり、
「民間出身校長のいいところを引き継ぎたい」。
区教委は「新たな課題はなく、力量を備えた人材を見つけるのも難しい」とし、
今後民間出身校長を採用するかは未定だ。

 代田さんは現在、塾との連携など独自の教育改革を進める
佐賀県武雄市で市立武内小校長などを務める。
同市特別顧問の藤原さんは「学力の二極化は学校関係者の誰もが知っていたのに、
何もしてこなかった。
学校と外をつなぎ、教育課題に取り組んでいくべきだ。
民間人の校長は今後も必要」と訴える。

小規模校に専科教員…元塾講師「新しい視点で教育充実」

 大阪市では市立学校長を原則公募と条例で定め、
13、14年度で民間出身校長計23人を採用。
セクハラなどの不祥事があり、今も校長を続けるのは19人だ。

 その一人、13年度に着任した敷津小の山口照美校長(41)は
塾講師などの経験がある。
1学年1学級の小規模校。理科などの専科教員は配置されておらず、
退職教員3人を9月に採用した。
複数の学校が共同で雇う仕組みがあれば最小限の費用で教員を増やせると考え、
市教委に提案する予定だ。
「小規模校への配置は『ありえへん』が学校の常識だったが、
塾では講師が複数の校舎を回るのは当たり前。新しい視点で教育を充実させたい」

昨年度、全国で90人…2005年度以降は横ばい

 2000年4月に学校教育法施行規則が改定され、校長は教員免許を持ち、
5年以上の教育経験があると定められていた要件が緩和された。
文部科学省の調査では、その後民間企業などの出身で、
教育に関する職に就いた経験のない校長が急増したが、
05年度以降は横ばい状態で、13年度は90人。

 「教育ルネサンス」では、「民間出身校長が行く」(06年5月)で
当時和田中校長だった藤原さんの奮闘を伝えるなどした。(伊藤史彦)
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