子どもの目線で新発見…一緒に「おやこ保育園」

幼稚園の送り迎えイラスト(ソフト)


読売新聞
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保護者同士 つながり深まる

 保育園は親から子どもを預かる所と思いがち。親子で一緒に参加する、その名も「おやこ保育園」が東京都内にあると聞き、のぞいてみた。
 7月中旬、午前10時前、東京・巣鴨のビルの多目的スペースに、母親と0~2歳児の親子10組22人が集まってきた。
 「始まるよ~♪」
 保育園を運営するこどもみらい探求社共同代表の小竹めぐみさん(32)の歌でスタート。「はっぱのゆれるおと、はなのひらくおと……」。小竹さんが絵本を朗読すると、子どもたちは引き込まれて聞き入った。この後、それぞれの母親が「上の子が一緒に連れて行ってと大暴れするのをなだめて来ました」「(子どもが)夜11時まで寝なかったけれど、朝ちゃんと起きてくれました」と報告した。この日のテーマは「音」。木琴やカスタネット、ペットボトルに砂を入れた手作りのマラカスを使い、子どもたちが思い思いに遊び始めた。
 「おやこ保育園」は小竹さんと共同代表の小笠原舞さん(31)が昨年6月から始めた。2人とも保育士として働いた経験がある。朝、子どもを預けて仕事に向かい、午後に引き取って帰宅する保護者と、コミュニケーションを十分とれないことに疑問を感じた。インターネットや育児書に情報があふれ、「ちゃんと子育てができているのだろうか?」と戸惑う保護者も見てきた。そこで、独立後、「子どもが0歳なら親も0歳。親子が一緒に学び育ちあえる場を作ろう」と、定員10組で受け入れを始めた。
 園は1期3~5か月で9回。既存の認可保育所や認可外保育所とは異なる。
 園内で子どもに接する際の四つのルールを設定。〈1〉「ダメ」などの否定語は使わない〈2〉子どもが集中している時は見守る〈3〉子どもの気持ちに共感する〈4〉命令口調は使わない――だ。
 遊びの時間の合間に、母親が子どもの様子で気付いた点をシートに記入する。
 昼食を挟んで、小笠原さんやボランティアのスタッフが子どもと遊んでいる間に、母親同士の話し合いが始まった。この日のテーマは、「アートや表現に、子どもが将来、どのように取り組むようになってほしいか」。「下手だからやらないじゃなくて楽しんで」「自分が練習が嫌で苦手意識を持ってしまっていた。表現とかアートは楽しいと知ってほしい」などの声が上がった。
 江戸川区の会社員、松崎舞理子さん(32)は「子どもとの時間を大切にしたくて参加しました。親子一緒というところに共感でき、回を重ねることで保護者同士のつながりも深まりました」と話す。埼玉県和光市の佐藤愛さん(34)は「子どもの『いやいや』がひどく、ヒントがほしくて。自分で考える時間をもらえてイライラが減りました」と喜ぶ。小笠原さんは「子どもだから分からない、できないことはない。子ども目線になれば発見がある」と話す。
 東京学芸大教授で同大付属幼稚園園長の岩立京子さんは「0~2歳は言葉や感覚などが急速に発達する。孤立しがちな若い母親が、子どもと新しい出会いをしたり、楽しい経験をしたりするのは重要」と話す。(原隆也)
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