養子縁組あっせん、児童相談所の6割どまり 職員不足背景に

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日本経済新聞
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 6歳未満の子供を実子として引き取る特別養子縁組のあっせんを2013年度に実施した児童相談所は全体の6割弱にとどまることが24日、厚生労働省研究班の調査で分かった。成立件数は267件だった。この制度は虐待など様々な事情で実親に育てられない子供が、別の家庭で養育されるようにすることなどを目的にしている。
 司法統計によると、民間団体のあっせんなども含めた13年の成立件数は474件。研究班は、あっせんの中核を担う児相の動きが低調だと指摘し、「慢性的な職員不足の中で虐待対応に追われたり、経験を持つ専任職員が配置換えになったりするなど態勢上の問題が背景にある」としている。
 調査は昨年8~9月に実施。国内の全207カ所(当時)の児相に質問用紙を送付し、95.2%に当たる197カ所から返信があった。
 13年度に、特別養子縁組を前提に、登録している里親に子供を委託した児相は114カ所(57.9%)で、委託件数は276件。委託したのが1件だったのは46カ所(23.4%)、2件が34カ所(17.3%)、3件以上34カ所(17.3%)となっている。このうち267件が成立した。
 一方、1件も委託していなかった児相は78カ所(39.6%)だった。5カ所は委託に関する回答がなかった。
 児相は、里親と子供の双方と面会するなどして性格や相性、家庭環境を調べ、委託するかどうかを判断することになっている。その際には豊富な経験や専門知識が必要とされるが、専任の常勤職員を置いている児相は56カ所にとどまった。
 研究班の代表を務める日本女子大の林浩康教授(社会福祉学)は「子供と里親を引き合わせる時だけでなく、委託後や縁組成立後も支援が欠かせず、児相の役割は大きい。長期間の勤務によって職員が経験を積めるようにする専門職化を進めたり、民間機関との連携を強化したりする必要がある」と話している。
 ▼特別養子縁組 原則として6歳未満の子供を養父母と縁組する制度。実親との法的関係が残る普通養子縁組と異なり、戸籍上、養父母の実子と同じ扱いになる。望まない妊娠など実親が育てられない事情があり、家庭裁判所が必要と認めれば、6カ月以上の試験養育期間を経て成立する。
 全国の児童相談所が中心となってあっせんするが、都道府県などに届け出をした民間団体や医療機関が行う場合もある。司法統計によると、2012~14年の成立件数は年間300~500件台で推移している。
〔共同〕
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