関東・東北豪雨:母子家庭、保育施設閉鎖で二重の経済損失

水害による荒地に立ち、これからを思う寺岡弥生さん(左)と大翔君=常総市で16日午後3時55分
毎日新聞
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関東・東北豪雨で被災した茨城県常総市で、母子家庭が二重の経済損失に直面している。水害で車などの必需品を失っただけでなく、仕事中に子供を預ける学童クラブや保育施設が閉鎖されて十分に働けないからだ。避難生活を終えても、生活再建の道は険しい。【二村祐士朗】
 同市新石下(いしげ)の美容師、寺岡弥生さん(37)は豪雨があった10日、自宅アパートから約1キロ離れた実家に一人息子で市立石下小2年の大翔(だいと)君(8)と避難。さらにヘリで救出された。14日に避難所の石下総合体育館から自宅に戻ると、仕事と子育てが現実問題として迫ってきた。
 7年ほど前に離婚後、時間の融通が利くパートで生計を立ててきた。災害前の月収は美容師の給料約15万円と、前夫からの養育費3万円。さらに市の児童扶養手当がある。
 大翔君は平日は午後6時まで無料の学童クラブに、土日曜日のどちらかは1日6600円の託児所に預けていた。16日に仕事を再開したが、学童クラブは23日まで閉所のため、平日は下校時刻の午後3時ごろまでに仕事を切り上げ、連休中で仕事のある日は託児所に預けている。
さらに、水につかった車の買い替えに約40万円はかかりそう。アパートの1階自宅は床下浸水で済んだが、床上浸水した実家のため、清掃代やボランティア約20人分の食事代など5万円以上を出した。「もっと仕事をしたいと思う半面、被害を目の当たりにした大翔のそばにいたいとも思う」と揺れる心を明かす。
 1〜12歳の子供4人を養う同市新石下の女性(32)も深刻だ。今月、離婚した直後に被災した。離婚前から週2日働いているコンビニエンスストアの深夜アルバイトでは収入が足りず、もともと悩んでいた。アパート2階の自宅は無事だが、車は修理代が約35万円かかる。迷った末、買い替えを決めた。昼も働きたいが、4歳の次男が通う保育園は浸水して23日まで閉園。1歳の次女の預け先も見つからない。「養育費だけで月約10万円は必要。お先真っ暗」とうつむく。

 ◇求められる長期的支援 現状把握すら進まず

 2010年の国勢調査によると、同市の母子世帯は327世帯864人。県母子寡婦福祉連合会は「市内の母子家庭の母親会員88人となかなか連絡が取れず、支援するにも現状や要望を把握できない」と打ち明ける。
 被害がなかった市内の絹西保育園は、園児以外の子供も一時預かるが「被災地が混乱しているのか申し込みがない」と話す。実際に受け入れている下妻市の大宝保育園は「どの保育施設も豪雨前から定員いっぱい。多くの子供を受け入れることは困難だ」と話した。県内の認定こども園や私立幼稚園の一部は、家の後片付けのためにと、大型連休中に子供を無料で預かる「保育ボランティア」を行っているが、長期的な支援は行き届いていない。
 「東日本大震災では、子育てと仕事の両立などの問題は避難生活を終えた後に悩みが深まった」と指摘するのは震災被災地で母子家庭を支援するNPO法人「マザーリンク・ジャパン」の寝占(ねじめ)理絵代表。「急場をしのいだ今こそ、母子家庭に対する支援が必要だ」と訴える。
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