無償化方針 めど立たず…幼児教育




読売新聞
------------------------------------------------------------------------------------------------
 この4月に国の「子ども・子育て支援新制度」が始まり、幼稚園、保育所が、両方の機能を併せ持つ「認定こども園」に移行しやすくなって、その数が倍増しました。
 新制度には、保育の受け皿を増やして保育所に入れない「待機児童」を減らす一方、できるだけ多くの3~5歳児に幼児教育を保障しようという趣旨があります。
 幼稚園と保育所の違いですが、幼稚園は学校教育法に基づく「学校」で対象は3歳~小学校入学前。教育方針をうたった文部科学省の「幼稚園教育要領」に沿って幼稚園教諭が指導にあたります。ただ、基本的に昼過ぎには帰宅になり、夏冬は長期休みもあるので、共働き家庭は利用しにくい施設です。
 一方、保育所は児童福祉法に基づく児童福祉施設で、保育士がおり、0歳~小学校入学前の子を原則8時間まで預かりますが、共働きなど、昼間に親が世話をできない事情がないと入所できません。近年は共働き家庭が増え、小学校入学前まで通う子が増えました。
 幼児教育は幼稚園というイメージがありますが、保育所にも教育機能はあります。「生活に必要な習慣や態度を身に付ける」など、幼稚園教育要領と大きく変わらない指針があり、特に満3歳以上では、小学校入学後に支障がないよう、指導の内容を幼稚園とほぼ統一しています。
 幼稚園・保育所を融合した認定こども園には、親の働き方に関係なく保育、教育を受けられるメリットがあり、保育から集団で学ぶ教育へのスムーズな移行も期待できます。
 教育内容や、費用についての議論はありますか。
 2020年度以降に小学校から順次実施される新学習指導要領と合わせ、幼稚園教育要領も改定されるので、内容の議論が始まっています。ものごとへの興味や関心を高めるなど、目標をどこにおくか、主体的、課題解決型の学力を重視していく小学校以上の教育にどうつなげていくか、様々な課題があります。
 幼児教育の費用については、政府の教育再生実行会議が3~5歳の教育無償化を提言しています。しかし実現には年間約7800億円かかるとされています。政府は財源を確保したうえで段階的に取り組む方針ですが、めどはたっていません。今年度予算では約400億円を低所得世帯の幼児教育の負担軽減などに充てるにとどまっています。
 海外では幼児教育を重視していますか。
 イギリスやフランスでは、幼稚園などを無償化することで、3歳以上のほぼ全員が幼児教育を受ける環境が整えられています。経済協力開発機構(OECD)も、加盟国に幼児教育の充実を促しています。
 背景には、幼児期の教育に手間とお金をかけることが効果的だということを示す研究結果があります。
 例えば、米国で、貧しい家庭の3~4歳児に対し、幼稚園などで十分に教育した子と、しなかった子を1960年代から40年以上追跡調査したところ、幼児教育を受けた子は、中学の成績や高校の卒業率、40歳時での収入が高いという結果が出ました。幼児期の教育に、自制心や粘り強さなどの特性を伸ばす効果があったとされています。(恒川良輔)
------------------------------------------------------------------------------------------------