(2)今日のランチ 未来の子供の健康に影響



産経ニュース
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 あなたが今、悩まされている病気、あるいはこれから悩まされるかもしれない病気になることが、実は「お母さんのおなかの中にいたときに決まった」と言われたら、にわかに信じられないのではないでしょうか。
 第二次世界大戦末期のオランダで起こった飢饉(ききん)の時にお母さんのおなかの中にいた人たちの、その後の健康状態を調べた研究があります。それによると、妊娠初期にお母さんが食糧不足で低栄養状態だった子供たちは、大人になってから糖尿病や高血圧、心臓の病気が多くなっていました。別のイギリスの調査では、生まれたときの体重が少ないと、やはり糖尿病や高血圧、心臓の病気に将来なりやすいという結果が出ています。妊娠中の母親の栄養状態が、生まれた子供の病気のなりやすさに影響を与えているようです。どういうことなのでしょうか。
 これには、栄養が足りない状況を経験すると体が“省エネタイプ”になるということが関わっているようです。どういうことかというと、お母さんのおなかの中で栄養が十分にもらえない状態が続くと、胎児はその期間、十分に体重を増やすことができません。そうすると、「生まれた後も栄養が十分にもらえないかもしれない」と、少ない栄養を効率よく使えるように体の機能を切り替えてしまうというわけです。しかし、生まれた後に予想以上にたくさんの栄養にありつけると、省エネタイプの体には栄養が多すぎる状態が続くことになります。その結果、生活習慣病になりやすくなってしまうというわけです。小さく生まれた子をゆっくり大きくするように栄養をコントロールしても、完全には影響を払拭することができないと言われています。以前は、「小さく産んで大きく育てる」と言われたものですが、これが現在の生活習慣病の増加と関係があるのかもしれません。
 妊娠中に母親の体重が必要以上に増えてしまうことも、その子を将来、糖尿病や高血圧などになりやすくしてしまう可能性があります。さらに遡(さかのぼ)り、妊娠前のお母さんの体重や、お父さんの生活習慣が、子供の将来の病気のなりやすさに関係することなども分かってきています。
 つまり、これから親になる若い人にとっては、今日どのような生活を送るのかということが、自分だけの問題ではないということなのです。
 さて、今日のお昼は何を食べますか?(北原ライフサポートクリニック内科医 下島和弥)
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