保育所落ちた……でも働ける 子連れ出勤、母カモン!! 人材確保へ託児施設設置、企業増

ベビーカーに乗る赤ちゃんとままのイラスト(カラー)


毎日新聞
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職場に託児スペースを作ったり、働く母親の横で子どもを遊ばせることを認めたりして「子連れ出勤」を可能にする企業が増えている。希望しても保育所に入れない待機児童の解消が進まない中、仕事と子育ての両立を目指す働き方の一つとして注目される。【末永麻裕】
     店内の一角をガラスで仕切った託児スペースで、保育士が従業員の子どもをおんぶしながら自身の子どもを遊ばせていた。福岡市博多区にある美容室とまつ毛エクステサロン「hal+Familia(ハルプラスファミリア)美野島店」。昨年12月のオープンに合わせ、従業員と客の子どもが無料で利用できる託児スペースを設け、保育士や看護師も直接雇用した。
     自身も1歳の女の子の母親でもある左近春香代表(29)は「子育て中でも働きたい女性やきれいになりたい女性を後押しする環境を作りたかった」と語る。経営する3店舗のうち一番新しいこの店に託児スペースを設置した。3店で計28人いるスタッフのうち13人が子育て中の母親で、うち8人が子連れで出勤している。
     オープン前に左近さんがブログとフェイスブックでスタッフを募集したところ、2週間で60人の応募があったという。5歳の息子を幼稚園に預け、2歳の娘を連れて出勤するスタッフの岳野明香さん(31)は「保育料を考えると娘を預けてまでは働けないと思っていた。保育所に落ちた周りの母親からは、こういう職場を見つけられてうらやましがられる。子連れで働ける会社を探している女性は多いと思う」と言う。
     企業側には貴重な人材を失わないようにする狙いもある。体験型カタログギフトの企画販売会社「ソウ・エクスペリエンス」(東京都目黒区)は、従業員が10人ほどだった3年前、出産を機に退職する従業員が相次ぎ、人手不足になったことで子連れでも働けるようにした。現在30人中11人が子連れ出勤で、保育所に子どもを入所させられなかった母親も多いという。
     託児施設はなく、働く母親の横で子どもが絵を描いたりして遊ぶが、大事な仕事や電話のために子どもが入れない部屋を設けるなどして、作業効率が下がらないようにしている。同社広報の関口昌弘さん(34)は「出産での退職は女性が多い職場にとって大きな課題。他の企業からも問い合わせが増えている」と話す。
     子連れ出勤の先駆けとして知られる授乳服製造・販売「モーハウス」(茨城県つくば市)の社長で、NPO法人「子連れスタイル推進協会」の光畑由佳代表は「ここ1、2年で子連れ出勤を導入したいという行政や企業からの問い合わせや、実際に始めているところが増えた。子どもを連れて働くことが、保育所に預けられないと働けないという現状を変える選択肢の一つになれば」と期待している。

    場所・費用、中小には厳しく

     一定規模以上の企業や病院などの間では近年、職場と同じ建物や近隣に保育所を開設する例が珍しくなくなってきた。
     こうした事業所内保育所については届け出の義務がないが、厚生労働省の2014年度の取りまとめでは全国に4593カ所あり、約7万4000人の児童が利用。このうち病院内が2811カ所(約5万6000人)と過半数を占める。
     ただ中小企業にとって保育所まで設置するのはハードルが高く、事業所内保育所を委託運営している日本福祉総合研究所(東京)は「希望はあるが、場所の確保や費用、常に子どもがいるかなどの問題で諦める企業が多い」と課題を指摘する。
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