野生イルカ、親代わりに子育て 近大チームが確認

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朝日新聞
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 野生のイルカが事故死した親の代わりに子どもを育てる行動を、近畿大学の研究チームが初めて確認した。英科学誌サイエンティフィック・リポーツで6日発表した。

 研究チームは2012年6月、東京都の伊豆諸島・御蔵島周辺にすむ野生のミナミハンドウイルカを観察中、漁網にからまって死んだ親(当時15歳)の子どもを、親ではない別のメス(同8歳)が連れ、授乳しているのを見つけた。その後約100日間子育てをしていた。
 代わりに子育てしたメスのDNAを調べたところ、死んだ親とは姉妹など近い血縁関係ではなかった。研究チームは過去5年の映像など観察記録を調べたが、このメスと死んだ親は特に仲が良い様子もみられない「他人」だったという。
 御蔵島周辺には約120頭のミナミハンドウイルカが生息。1994年以降、水中撮影などでイルカの個体識別の研究が進んでいるため、今回の発見につながった。親がいない子猫を犬が育てるといったケースはあるが、親代わりになった個体が子育て中や子を失ったなどの事情がある場合が多いという。今回子育てをしたイルカにそのような事情は確認されていない。
 近大の酒井麻衣講師は「人間社会の助け合いが、どのように進化してきたかを解明するヒントになりうる」と言っている。(小堀龍之)
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