家に入れない子どもへ 絵本で「大丈夫だよ」



毎日新聞
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 熊本市の子ども発達支援センターが、地震の揺れや物が落ちてくることが怖くて家に入ることができなくなった子どものための絵本「やっぱりおうちがいいな」を作製した。熊本市のホームページからダウンロードできるほか、パソコンなどのデジタル器機がない場合は、センターで印刷したものを受け取ることができる。
     物語は、主人公のあきらくんが被災するところから始まる。2週間、車中泊を続けた後に自宅に戻るが、「おうちはこわいよー」とおかあさんにしがみついて泣くばかり。先に家に入ったおねえちゃんから、「ほら、くまモンも いえでまってるよ」と大好きなくまモンのぬいぐるみを見せてもらい、勇気を出して家に一歩を踏み出すが、夜になると、地震を思い出して泣いてしまう。
     絵本では地震を、「ちきゅうさんが、かぜをひいたよ。『ハックシュン!!』」とやわらかな言葉と絵で表現した。また「くまモン、プラレール、ミニカーなどのおもちゃがいっせいに はくしゅでむかえてくれました」とやさしい言葉で、子どもに勇気が伝わるように語りかける。
     絵本はセンターの所長を務める医師、木村重美さんと保育士の細郷幸美さんが文を、同じく保育士の川嶋久美さんが絵を担当した。センターには、地震後に「子どもが家に帰ることができない」との相談が数件あった。「電話が1本あれば、おそらくそのまわりには多くの悩みを抱えている人がいるはず」と木村さん。電話では伝わらないことも、絵本ならメッセージを伝えられると考え、すぐに着手。3日間で完成させ、6日にホームページでダウンロードできるように掲載した。
     絵本では、大切にしているおもちゃを身の回りにおく、落ちてきそうな物を片付ける、地震が発生したらみんなで逃げるから大丈夫と伝えるなど、保護者への具体的なアドバイスを織り込んでいる。木村さんは、子どもに安心感を与えることが大切とのメッセージを絵本に託したと話す。
     また、たとえ家に入ることができなくても、「なぜ、できないの」と責めることはせず、一歩進んだらほめてあげるなど、「長い目で見てあげてほしい」と木村さんは話している。【江刺弘子】
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