子どもの数は減っているのに… なぜ保育所が足りないのか?

東京・国会議事堂前で、「保育園落ちたの私だ」と書かれた紙を持ち抗議する人たち。男児の上には「落とされたのオレだ!」の文字も (c)朝日新聞社


dot.
------------------------------------------------------------------------------------------------
「保育園落ちた日本死ね!!!」と書かれた個人ブログから始まった、保育園増加を求める署名やデモ行動。少子化といいながらも保育園が足りない現実に、首を傾げる人も多いだろう。

 毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載した、なぜ保育園が足りないのかについての解説文を紹介する。

*  *  *
 2月に「保育園落ちた日本死ね!!!」という匿名のインターネット投稿があり、話題になった。それ以来、保育施設に子どもを入れられなかった親たちの共感を呼び、保育制度の充実を求める署名や行動が広がっている。

「認可保育所」に申し込んだのに入れない、いわゆる「待機児童」の数は、2009年以来、2万人を超えている。待機児童には、認可保育所に入所許可されたものの希望と違う保育所だったため入らなかったり、一定の基準を満たしている「認可外保育所」に入ったりした児童は含まれていないため、実際にはもっと多いといわれる。

 出生率の低下で子どもの数が減少するなか、なぜ待機児童数は減らないのか。背景には、子育てをしながら働く女性が増えたことがある。高度経済成長期は、結婚した女性は専業主婦が圧倒的に多かった。これが1990年代に逆転して、今では共働き家庭のほうが多くなった。離婚の増加により、ひとり親家庭が増えたこともある。子育てしながらひとりで働くには、保育所が必要になるからだ。


 国も2001年から「待機児童ゼロ作戦」として、保育所の受け入れを増やす努力をしている。保育所の定員は、04年に全国で約203万人だったのが、14年には約234万人に増えた。待機児童が多い都市部では、新しい施設をつくるのに敷地の問題もあるため、小規模な保育所も認可できるようにした。また、企業に従業員向けの保育施設の設置を促すため、「企業主導型保育所」の制度が4月に創設された。自治体の認可がなくても国から補助され、複数の企業で共同設置もできる。

 また、国は17年度末までに約50万人分の保育の受け入れを増やす目標だが、そのためには新たに9万人の保育士が必要になる。だが、仕事のきつさ、責任の重さと給与の低さなどが原因で、すでに保育士不足が問題の地域もある。保育士の平均給与は、ほぼほかの職種の平均の7割程度。そのため、働く環境と給与の改善が求められている。安倍晋三首相は、17年度から保育士の給与を2%引き上げる考えを表明した。

【キーワード】認可保育所
施設の広さや保育士等の数など、国の基準を満たして都道府県知事に認可された保育所。受け入れの質から、保育を希望する親のほとんどはまず「認可保育所」に申し込む。東京都の場合、東京都独自の基準を満たした「認証保育所」もある。国の基準に満たない保育施設は「認可外保育所」という

(解説・牧陽子/ジャーナリスト)

※月刊ジュニアエラ 2016年6月号より

------------------------------------------------------------------------------------------------