MAKANAこども食堂 菊地敦子さん、皆川紘子さん /栃木


毎日新聞
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母親に心のゆとりを 菊地敦子さん(37)、皆川紘子さん(39)

 子どもを中心に無料や低価格で栄養のある食事を提供する「子ども食堂」が全国的に広がり、注目されている。県内では昨年10月にオープンした「MAKANA(マカナ)こども食堂」(上三川町上三川)が先駆けとなり、先月には宇都宮市にも「昭和子ども食堂」ができた。母親らにも人気の「マカナ」を共同で主宰する菊地敦子さん(37)と皆川紘子さん(39)に、設立の経緯や将来の展望などを聞いた。【田中友梨】
     −−子ども食堂とは、どんな場ですか。
     ◆菊地さん 子どもしか利用できないと思われがちですが、誰もが来ることができ、一緒にご飯を食べることのできる場所です。栄養のある食事を低価格で提供することで、「子どもの貧困」や「孤食」などの問題にアプローチしています。
     −−設立のきっかけは。
     ◆菊地さん 昨年まで1年3カ月間、上三川町の学童保育で臨時指導員として働いていました。その頃は大人が子どもに対して支配的で、子どもが汚い言葉で反発するようになったり、生き生きとした表情を見せなくなったりしたことに疑問を感じていました。「何とかできないかな」と考えていた時、同僚に「(自分が所有していた)コミュニティースペース『上三川の家』を使ったら」と助言を受け、腰を上げました。
     ◆皆川さん ワークライフバランスコンサルタントとして「子どもの居場所作りをしたい」と考えていた昨年の夏ごろに菊地さんと出会い、意気投合しました。シングルマザーの私は、子育ての大変さを実感しています。だから、「食事の面が一番大変。支援できたら」と、「子ども食堂」の設立を決めました。
     −−マカナの特徴は。
     ◆菊地さん マカナとはハワイ語で「プレゼント」という意味です。おいしいご飯はもちろん、子どもには友達との出会い、お母さんには時間的余裕や心のゆとりなどの贈り物をしたいという思いで名付けました。営業は毎週水、金曜日の午後5時から8時まで。子ども300円、大人500円で、栄養バランスを考えた料理をビュッフェスタイルで提供しています。調味料は無添加のものを使い、食物アレルギーにも対応しています。例えば今日の献立は、ささみのマスタード焼き、グリル野菜、みそ汁などです。
     −−地域の人に限らず、遠方からの利用者も増えていますね。
     ◆皆川さん 今のところ家庭が貧しいなどの理由で来る子どもはいないのですが、「小さい子どもがいて外食したくても行けない」という家族や「今日は父親が外で食べてくるから夕飯は楽をしたい」という母親が子どもを連れて食べに来るなど、毎回5〜10家族が利用してくれます。大家族の食卓のような雰囲気です。食材の提供やボランティアなど、支援してくださる方も増えてきてうれしいです。
     −−今後の目標は。
     ◆菊地さん 将来的には預かり保育をしたいと思っています。今年の夏休みには試験的に水、金曜日だけ小学生を対象に実施する予定です。
     ◆皆川さん 法人化することで継続的な運営も目指します。多くの人に食堂のことを知ってもらい、気軽に利用してほしいです。
    聞いて一言
     初めてマカナを訪れた日、「おかえりなさい」と声をかけられて驚いた。「みんなが帰ってこられる場所にしたい」という願いを込めて全ての客を「おかえり」と迎えるらしい。おいしい料理でおなかを、温かいもてなしで心をも満たしてくれるマカナのような子ども食堂が、今後さらに広がっていくことを願う。

     ■人物略歴

    きくち・あつこ=写真左

     宇都宮市出身。宇都宮大卒。会社員などを経て2011年に参加型イベントの企画・運営などをする「ワークショップreco」を設立。14年から1年3カ月間、上三川町の学童保育施設で臨時指導員を務めた。

    みながわ・ひろこ=写真右

     宇都宮市出身。白鴎大卒。東京で会社員を経験後、ワークライフバランスコンサルタントとして独立。キャリアカウンセラー、子育てアドバイザーとしても活躍している。
     MAKANAは上三川町上三川5067の12(電話090・3245・5243)。
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