自由保育と一斉保育の違いは?メリット・デメリットの保育士解説

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cozre(コズレ)
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自由保育型と一斉保育型。本記事では、なんとなく聞いたことがある保育園を指す2つの言葉について、それぞれのメリット・デメリットに触れながら違いを解説していきます。

今は保育園は選べない時代と言われていますね。けれど選ぶことができないからこそ、ようやく入園できた保育園の方針との摩擦を生み出さない為にこうした方針の園なのだと理解してお子さんを預けられるようにしたいですよね。

【歴史の変遷】自由保育型と一斉保育型

保育園の歴史を語るうえで避けては通れない人物は?

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まずは少しだけお堅い話をします。飛ばして次の項目に目を通してもらっても差し障りはありませんが、保育園の歴史について簡単に説明します。

保育園の歴史を紐解く時に欠かせない人物がいます。それがフレーベル、モンテッソーリ、ボウルビーそして赤沢鐘美(あかざわ あつとみ)夫妻です。

フレーベルは、幼稚園の原型を造った幼児教育の先駆者です。それまでは子どもを預かる施設というと、孤児院や農業従事者の子どもなど、放任されてしまう子ども達を救済する施設が主でした。フレーベルは、子どもという存在について「幼児期から立派な人類の一員であり保育を受けるべきである」という考えを持った人物でした。今でこそ子どもの人権や権利が謳われていますが当時こうした考えを持つ人はそういなかったのです。

モンテッソーリは、イタリアの女医でモンテッソーリ教育を築いた人物です。彼女は「子どもは、自らを成長・発達させる力をもって生まれてくる。 大人(親や教師)は、その要求を汲み取り、自由を保障し、子どもたちの自発的な活動を援助する存在に徹しなければならない」(参考リンク:日本モンテッソーリ教育綜合研究所の文章より一部抜粋)という、現在の保育の考え方の基盤となる保育方針を打ち出しました。

ボウルビーは、「アタッチメント(愛着)」という言葉を用いて母子間の愛情の形成が、子どもに大きな影響を与えることを世間に広めました。この言葉、今では育児雑誌や児童心理などの分野で扱われることが多くなり、耳にしたことがある方もいるでしょう。これまでの私が執筆した記事の中でも度々登場しています。

赤沢鐘美は、諸説ある中で保育原理の教科書にも記載されている日本で保育所を初めて創設したとされる人物です。

これらの人物の尽力によって保育という考えが形成され、今のように世間に認知されるようになりました。
今回、ご紹介したスポットの詳細はこちら

教育か自由か?時代と共に変移する保育体系

保育の歴史の中でずっと議論されていることがあります。

それが今回のメインテーマである「自由保育型と一斉保育型」のどちらが子どもにとって有益であり、真に子どものためになるか?ということです。

実はわりと短い期間に、自由保育型が主流の時代があり、一斉保育型が主流の時代があり、2つを折衷した考えも生まれ、また自由保育型が見直され、一斉保育型に注目が集まるという変移を続けています。

保育に正解はないなんて言われますが、正解がないからといって何もしなくて良いわけはありませんし、考えなしに子どもと関わることもできません。保育従事者は、過去も今でも子どもの為になる保育とは何なのかという答えを求めて試行錯誤をしているのです。

【子どもの自主性を重んじる】自由保育とは?

自由保育型=放任保育?明確な違いがあります!

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自由保育と聞くとどんな印象を受けますか?

子どもが好き勝手に動く、放任的な光景を浮かべた人もいるかもしれませんね。これは「子どもにとっての自由」という捉え方に誤解が生じているからでしょう。

自由保育の本質は「子どもの自主性を養い、自発的に行動ができる子どもを育てる」ということにあり、日々の生活の中でその本質を実現するために保育士が関わっていきます。

一方で、保育士からは関わりを持たず、ただ単に「子どもが好き勝手に遊ぶ」ということは、一見とても自由である印象を受けます。しかし、その自由さの中では子ども達の成長は見込めません。そんな無関心とも取れる状態を私たちは自由ではなく放任と表現します。

これが「自由保育」と、自由保育の本質を取り違えた「放任保育」との明確かつ絶対的な違いなのです。

自由保育型の理想と現実

自由保育を行う場合には適切な環境と、相当に経験と知識を持った保育士の存在が必要です。適切な環境というのは、沢山の子どもそれぞれの興味関心を満たすだけの用具や遊具が十分にあり、それを保育士がしっかりと見守れる環境です。

文字にすると理想的で、パパママからするとこれって保育園としては普通なんじゃ?と思うかもしれません。しかし、これがなかなか実現することが難しいのです。

自由保育の場では、子どもは自分の意思でどんな遊びをしようか選択をして、自発的にその遊びを始めます。その際、保育士は個々の子どもが遊ぶ様子、友だちとの関わりをしっかりと把握し、必要な時に子どもに関わりを持って、促したり仲介することが求められます。

現行、日本の幼稚園や保育園の3歳児以上のクラスでは子ども30人に対して先生は1人しかいません(障がいを持つ子どもがクラスにいるなどの理由で加配という補助の先生はいます)。

自分の周りに30人の子どもがいると想像してみてください。

部屋の一角では折り紙をしている子どもがいて、その隣では積み木で遊ぶ子ども達がいる。対面では机で粘土をする子がいて、隣の机では集まってカルタをする子ども達。そのそれぞれの様子を把握して、これからはの課題はなんだろう?その課題を達成するにはこんな関わりを持って欲しいから、どのように導こうか。30人それぞれの個性に合わせて考えます。

仲良く遊んでいると思っていたら背中から泣き声がして、理由を聞いていたら肩を叩かれて転んで怪我をしたと言う・・・

そう。完全な自由保育を現在の日本で行うのは本当に難しいのです。行う方法があるとすれば先生の人数を増やすことが必要になるでしょう。

ニュースで取り上げられるような保育士不足の現状では、自由保育を実現できている施設は本当に少ない、というのが事実です。

自由保育の本質は、子どもの可能性を信じた保育の理想とも言えます。そこで、完全な自由保育の実現は難しいけれど部分的に自由保育を取り入れることで、子どもの自主性と自発的で能動的な行動力を身につけられる折衷型が今は主流となっています。

【能率的で保育士主導】一斉保育とは?

皆で一斉に与えられた課題をする中で子どもの成長を促す保育

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子どもの自主性と自発的な行動を促す自由保育型に対し、一斉保育型は保育士の主導(あくまでも主体は子ども達)でカリキュラムに沿って発達や成長を促す方針の保育です。

一斉保育型では、子ども達の成長や発達を保育士がしっかりと把握して、次の成長につながる課題を用意します。その用意された課題をクラスの子ども達が一斉に取り組むことで、更に個々の成長・発達を把握しながら、次の課題へ取り組めるように導いていきます。

課題などという言葉を用いているので「教育」を連想させてしまうかもしれません。例を少しあげると「指の動きの課題」でよく用いられるのは折り紙やボタン遊びなどであり、「協調性の課題」であれば合奏やパラバルーンなどが良い例になると思います。

たとえば、保育園や幼稚園などにある玩具で遊ぶこともそのうちの1つにあたります。大人の趣向品とは異なり、発達の段階に合わせた動きや思考を必要とするものだからです。この点、「子どもの仕事は遊ぶことである」と言った人は、保育の本質を見事に捕らえているな、と感心します。

子どもたちの個性に合わせた援助が求められる難しさ

一斉保育型の難しい点は、保育士の技量と裁量によっては、クラス全体の成長を均等に促すことが困難になってしまう場合があることです。

保育園や幼稚園に通う年齢の子ども達は、月齢・興味関心の差はもちろん、成長の個人差もとても大きいです。例えば、身長、手指の分化、お友達への関心等について、大きな差があるのです。

しかし、クラス全体に同じ課題を提示しなければならないのが一斉保育型です。そのため、保育士には、子どもたちの個性にしっかりと目を向けながら、必要な発達や狙いが達成できるような援助が求められます。

多くの園が折衷型

保育園の現状を踏まえると、自由保育には限界が

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様々な個性を持った、多様な年齢・月齢の子ども達が生活をする保育園や幼稚園などの保育施設では、その特性から困難なことも沢山あります。

「子どもの自主性を尊重して、それぞれの興味関心や発達を見守る自由保育型」と「保育士が、主体である子ども達の成長を促し主導していく一斉保育型」。

一概にどちらが良い悪いということはできませんが、保育園・幼稚園の方針を読み解く際には、この2つの型の違いを押さえておくと良いでしょう。

現状、完全な自由保育型や完全な一斉保育型の施設というのは、あまり多くないのではないかと筆者は考えています。ではどのような保育が多いのかというと、自由保育型と一斉保育型を折り合わせた折衷型です。

折衷型保育における一日のスケジュール

登園
自由遊び (自由保育型)
設定保育 (一斉保育型)
英語の時間(一斉保育型)
給食
午睡
おやつ
外遊び (自由保育型)
降園

保育士の質が重要

これはあくまで一例ですが、このように自由保育型のような時間と、一斉保育型のような時間とを織り交ぜることで、両方のメリットを取り入れ、デメリットを少なくする方法が取られる園が多いのではないでしょうか。

そのうえで、自由保育型と一斉保育型のどちらに比重を置いているのかを施設の特色として「○○型保育」をしていますと公示します。

折衷型においても、ポイントとなるのは保育士の質です。質が低いままでは自由保育時間で放任に近い状態になってしまいます。一斉保育型では個々の発達に目を向けることができずに、ただカリキュラム上の課題を与えるだけになってしまうことも考えられます。

そのため、折衷型も理想的であると断言が難しい。繰り返しになりますが、最終的には、そこにいる保育士がどれだけこのようなメリット・デメリットを理解して取り組んでいるのか、が重要であるといえるでしょう。

まとめ

今回は保育園などの施設が打ち出す保育方針である「自由保育型」と「一斉保育型」。そして、これらを織り交ぜる「折衷型」について説明させていただきました。

今後、保育の現場がより整備され、各保育方針の狙いを最大限引き出せるような質の高い保育サービスの提供が広まれば良いなと思います。

冒頭でも書きましたが、今は待機児童問題などもあり、理想の保育園に子どもを入園させてあげることが難しい時代です。運よく入れた保育園が理想の形態と違うこともあるかもしれませんが、その園にはその園の、子どもを想う狙いがあることを知っていただければ、園との摩擦が少なく両者にとって、そして生活をする子ども達にとって過
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