2016/07/25

共働き世帯向け病児保育 緊急事態に必要性を実感


日本経済新聞
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その日は、本来余裕があるはずだった。大学講義は15時前に終わり、19時からトークショーに出演予定。子どもはバス送迎つきの民間学童に預けていて、さらにこういう風に遅くなる場合はいつも大学院生に家庭教師のアルバイトを頼み、子どもの勉強兼留守番を頼んでいた。

 子どもと院生の夕食のデリバリーも手配し、トークショー会場に行くのは開始30分前でよいから、3時間は大学に残って原稿を書く時間が確保できるはず。しめしめ……と思いふと見ると、携帯電話は子どもの小学校から着信の嵐。留守電を聞くと、子どもが急に高熱を出したので、至急迎えに来てほしいとのこと。

 その日夫は遠隔地で仕事で、緊急時にお願いできる人はほぼいない。一方、トークショーはすでに予約完売で、絶対に穴を開けるわけにもいかない。

 慌てて院生に予定より1時間早く来てもらえないか頼むと、幸い彼女の都合はつけてもらえた。小学校に駆けつけると息子は保健室でぐったりしており、熱を測ったら38度8分。朝までは元気だったのに……。養護教諭は、学校で溶連菌感染者が出たところなので、病院で検査してほしいという。子どもを自宅に連れ帰り、院生の到着を待ち再び電車に飛び乗って、トークショーに出演した。

 その後息子は病院で検査したところ溶連菌は検出されず、ただの夏風邪。もっとも、最高で40度近い熱を出した上、風邪を引くとよく併発するものもらいを発症し、眼科にも行く羽目に。この過程であらゆる原稿の締め切りが雪崩のように崩壊し続けた一週間であった。

 今回は留守番の院生に頼むことができたが、つくづく共働き世帯にとって病児保育は必須事項であると思う。もっとも現状では、キャンセル率の高さや稼働率の低さなどによる収益上の課題が大きいとの指摘もある。厚生労働省によると病児対応型・病後児対応型の施設の延べ利用児童数は、年間57万人。今後共働き世帯数増加が見込まれることから、一層のニーズの高まりも予期される。

 私の周囲でも、子どもの持病などにより離職する母親の話はよく耳にする。子どもの体質により就労継続が断念されるような事態は、母子双方にとって不幸なことに違いない。
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