米で保育費が急騰、家計を圧迫


ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
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 米国では育児費の急騰が家計を一段と圧迫し、その不満は米大統領選の政策討論に取り上げられるまでになっている。
 米労働省によると、2009年にリセッション(景気後退)を脱却して以降、育児費用は総合的な物価指数の2倍近いペースで上昇している。これに住宅費の急騰と賃金伸び悩みが相まって、幼い子供のいる家庭は苦しい状態に置かれており、大統領候補者もこの問題に注目している。
 民主党の候補指名を確実にしたヒラリー・クリントン氏は、働く母親からの票を集めようと、保育費を家計収入の最大10%に抑える案を提示した。これは、ナニーやベビーシッター、託児所に収入の5分の1以上を優に費やす多くの家庭にとって劇的なコスト削減になる。
 クリントン氏は最近遊説に訪れたケンタッキー州で「家計のやりくりは大変だ」と述べた。同氏が提案しているのは、「ヘッドスタート」プログラム(低所得者層向けの幼児の健康な発育や発達、学習を支援する施策)や4歳児向けの公立保育園、大学に通う親を対象とした育児奨学金の利用を拡大するといった施策だ。
 一方、共和党の指名を確実にしたドナルド・トランプ氏が本選で勝つには、有権者の政治的な関心が家庭に関係したことに集中している郊外で支持を得る必要がある。同氏は具体的な育児政策は提示していないが、減税と税制の簡素化による中間層の支援を呼びかけている。
 雇用の増加に伴って保育需要も増加している。その結果、保育コストが押し上げられ、収入の増加が一部打ち消されている。
 農務省のデータによると、2013年生まれの子供を18歳まで養育する費用は推定24万5340ドル(約2520万円)。これは米国の平均的な家庭の約5年分の所得に相当する。2003年生まれの子供の養育費はインフレ調整後で22万6108ドルだ。インフレ調整後のコストの増加は主に保育、教育、医療費の増加によるものだ。
 世論調査会社ギャラップが4月に実施した調査によると、子育て世代に当たる30~49歳の米国人の37%が快適に暮らすために十分な資金がないと答えた。この割合は、他のどの年齢層よりも高かった。
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