新設相次ぎ保育士争奪戦激化 独自の給与補助も


神戸新聞
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 待機児童の解消に向け、各地で保育園新設が相次ぐ中、兵庫県内の自治体間で保育士の争奪戦が激化している。県内41市町で今年4月時点の待機児童数が295人と最多の明石市では、9月1日に開園した民間認可保育園が保育士不足で定員を4分の1以下に減らす事態に。明石をはじめ同じ通勤圏にある自治体は、低いとされる賃金の独自補助などに乗り出し、「わが町の保育士に」と訴えている。(広畑千春)
 8月下旬、明石駅前に保育士資格などを持つ19~57歳の男女8人が集まった。市が初めて企画した私立保育園の見学ツアー。バスで市内の保育園3カ所を回り、保育内容や特長の説明を受けた。市外からの参加もあり、神戸市垂水区の女性(41)は「電車ですぐだし、明石で働いてもいいなと思った」と話す。
 保育園に加え、企業内託児所や子育て支援施設などが増える中、保育士養成課程を持つ大学などには、学生の5~10倍の求人が寄せられることも。明石市は来春までに、分園や増築を含め保育園や認定こども園など21カ所を拡充する予定で、保育士約190人が新たに必要になる。
 だが、国が定める保育園の運営補助金の基準額は県内は“東高西低”だ。芦屋市が最も高く、阪神地域や神戸市が続いており、「人材が東に流れている」と明石市待機児童緊急対策室。そこで、同市は来年1月から、法人に賃金増額分の半額(上限月1万円)を補助。最大月2万円のアップが見込め、「格差を解消できる」と力を込める。さらに県内で初めて、新卒保育士には2年間で30万円、潜在保育士には就職時に10万円を支給する制度を計画している。
 賃金補助では、三木市も今年7月から、官民の保育教諭らの月給を1万5千円増額するなどの支援策を開始。姫路市は市内の専門学校との連携を強め、地元の学生や潜在保育士の囲い込みを図る。
 賃金が比較的高い神戸市や阪神間の自治体でも、就職フェアの回数を増やし、保育園見学ツアーも始まった。
 一方で、自治体による賃金補助は、いつまで続くか分からないという指摘もある。全国保育団体連絡会保育研究所(東京都)の村山祐一所長は「自治体の支援には限界がある。運営の基になる国の補助金の額や保育士の配置基準などが社会の実情に合っておらず、抜本的な改善が不可欠だ」と話している。
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