幼児に大人気『エビカニクス』 15年経て脚光


NIKKEI STYLE 様
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「エビ カニ エビ カニ ウォウ~!」と、エビとカニの着ぐるみ姿の2人の女性アーティストが歌い踊る『エビカニクス』が人気だ。歌っているのは音楽ユニットのケロポンズ。5月に『ミュージックステーション』(テレ朝系)で曲が紹介された後、民放各局の朝の情報番組や野外フェスに出演。YouTubeではPVの再生回数が1400万回を超えた。 にわかに脚光を浴びているケロポンズと『エビカニクス』だが、実は同曲は15年前の発表曲で、アーティストも結成17年のベテランだ。幼児教育現場の経験を持つケロポンズは、これまで、『おかあさんといっしょ』(NHK教育)や『それいけ!アンパンマンくらぶ』(BS日テレ)などの教育番組や、教育者向けのセミナーなどに出演し、子育ての現場では有名人だった。彼女たちが『エビカニクス』を踊るテレビ番組を動画サイトに録画して子どもに見せる親が増えたため、2012年に公式動画をYouTubeで公開した。
 これが昨年、音楽業界関係者の目に留まり、7月にユニバーサルミュージックから『エビカニクス』ほかを収録したアルバムでメジャーデビューすることに。個性的な歌やダンスで、音楽番組やワイドショーから引っ張りだこになり、「年末のNHK紅白歌合戦への出場を目指し、キャンペーンに総力を注いでいく」(ユニバーサルミュージック)とさらなるプロモーションに力が入る。着実にセールスを伸ばしており、「取材や出演のオファーが殺到している」(マネジャー)と大忙しの毎日だ。
 ケロポンズは、増田裕子(ケロ)と平田明子(ポン)のユニット。1999年に音楽ユニットを結成し、『エビカニクス』は01年にニューヨークで録音された。インディーズで1000枚プレスし、親子コンサートや教育者向けセミナーの会場で販売を始めた。
 それから15年、『エビカニクス』がメジャーアルバムになり、今、そのブレークを後押ししているのが20歳前後の若者たちだ。彼らは、インディーズ時代のケロポンズの音楽を聴いた幼稚園の先生や保育士が、CDを現場に持ち帰り、幼児たちに聴かせた、その時代の子どもたち。大人になった当時の子どもたちが再び、YouTubeやテレビで『エビカニクス』を聴き、また盛り上がっている。
 「学生がカラオケで歌ってくれています。シンプルな振り付けなので、小さい頃に覚えた踊りを、すぐ思い出せるみたいです」(増田) 簡単であること、これも『エビカニクス』が15年たって新たにブレークした背景にあると、ケロポンズの2人は分析する。ヒットの要素は、大きく分けて次の3つ。(1)振り付けはわずか4種類。「1歳児でもつかまり立ちしながら踊れます」(平田)。(2)「エビカニ」を連呼する歌詞のサビ感が強く覚えやすい。(3)テロ直後のニューヨークで本場のゴスペルシンガーが参加して生まれた力強いニューヨークサウンド。
 CDしかない時代なら記憶から消え去っていたかもしれない音楽が、ネット上で公開され続けたことで旧知のファンに思い出され、それがまたCDになって新しいユーザーに広がる。ネットアーカイブ時代らしいブレーク事例と、『エビカニクス』は位置づけることができるだろう。このようなヒットの卵が、ネット上にはまだ隠されているかもしれない。
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