広がる「企業内保育所」 自家用車通勤OK、午前6時開所…柔軟な運用


産経WEST様
------------------------------------------------------------------------------------------------
待機児童を解消して女性が働きやすい環境を整えようと、今年4月、企業が従業員のために設置する保育所を国が手厚く補助する「企業主導型保育事業」が始まった。内閣府によると8月末までに約600件の申請があり、企業内保育所に改めて注目が集まっている。
 21日午後3時半、大阪市中央区の大塚グループ大阪本社。建物内にある「ビーンスターク保育園おおさか」で、大塚製薬貿易部で働く石飛朱美さん(37)が、長男(1)を笑顔で抱き上げた。石飛さんは10分前に仕事を終えたばかりだ。
 「企業内保育所は狭くて園庭もないイメージでしたが、ここは園庭もあり明るくて広い。見学して『ここなら安心して預けられる』と確信しました」と石飛さんは振り返る。
 大塚グループでは平成23年4月、創業地である徳島市内に企業内保育所を開設。大阪でも26年4月に開園し、現在は0~2歳児8人が通う。都市部では通勤ラッシュ時の登園が敬遠されがちだが、保育所利用者には自転車や自家用車での通勤が認められ、敷地内の駐車場が無料で使える。石飛さんも市外から自家用車で通勤しているという。
 同保育園事務長の阿見かおりさん(47)は「優秀な女性社員がいつでも好きなときに復帰して能力を発揮できる環境を整えることは、会社にとって財産。社員にとっても人生設計が立てやすいと思います」。子供をこの保育園に通わせることを考慮し、結婚や出産の際に近くに移り住む社員も増えているという。
この日は鳥取県中部を震源とした地震が発生し、大阪市内も揺れた。石飛さんは「何かあったときでも、すぐ駆けつけられる。そのありがたさを改めて感じました」とうなずいた。


 企業内保育所はこれまで、利用者が少なければ採算が取りにくいなどの課題があった。今年4月に始まった国の「企業主導型保育事業」では、定員の50%以内を従業員以外の地域の子供たちに開放したり、複数の事業者で共同設置することを想定。施設整備費や運営費について認可保育所並みに手厚く助成し、設置を後押ししている。
 今年5~6月に行われた第一次募集に応募し、今年8月に企業内保育所を開所した兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」でも、地域の子供に開放する形式を採用。以前は社宅の一室で認可外保育所として運営していたが、ホテルから徒歩5分にある元社員寮を改修して新設した。午前6時から午後10時と開所時間が長く、ホテルで働く従業員の多様な勤務時間に対応しているのが特徴だ。
 開所から約2カ月、現在は14人が通園している。担当者は「保育園が広くなったので、子供たちは大喜び。母親の勤務先から近いため、利用者も保育士も安心だ。女性が働きやすい環境を作ることができてよかった」と話し、地域の待機児童解消の役割も果たしていきたいとしている。
《今週のキーワード・安心力》 厚生労働省によると、今年4月1日時点の待機児童は2万3553人。保育所が見つからず、育児休暇からの復帰を先延ばしにする女性は少なくない。確実に入れる保育所が自社にあり、好きなタイミングで仕事に復帰できる安心感は何にも代えがたいと思う。
 業態を反映して開所時間を長くするなど、柔軟に運用できるのも魅力だ。地域枠を設けて社外にも開放すれば、知名度や好感度のアップにもつながるのではないだろうか。(加納裕子)
------------------------------------------------------------------------------------------------