「子ども走ると芝傷む」北大が立ち入り規制 幼稚園や保育園困惑


北海道新聞どうしんウェブ様
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 北大(札幌市北区)が今春から、構内の緑地「中央ローン」や一部の芝生への立ち入り規制を強化し、近隣の幼稚園や保育園に戸惑いを広げている。札幌市内の中心部には園庭がない施設が少なくない。これまで構内の芝生で子どもを遊ばせていた多くの園からは「子どもが楽しめる貴重な場所なのに」と困惑の声が出ている。
 北大構内のクラーク会館近くにある中央ローンは約1万2千平方メートル。幼児が転んでも比較的安全な広い芝生と小川があり、市民や観光客の憩いの場として利用されている。
 「北大に遊びに行く幼稚園や保育園が激減した」。北大近くにある北区の男性保育園長(56)は現状を説明する。この保育園は今春まで園児の遊び場としてよく利用していたが、大学職員から直接注意されることが増え、利用を諦めた。中央区の幼稚園も毎年、遠足の行き先にしていたが「今年はお弁当を食べるのもだめだと言われて、当日は仕方なく、構内の別の場所に移動した。住民や観光客と接する貴重な機会も減った」と残念がる。
 北大は今年5月から中央ローンや、その近くの農学部と理学部周辺の芝生を「幼稚園・保育園の園庭ではない」として、利用規制を求める文書を訪れた各園に手渡した。北大によると、この結果、訪れるグループは今年4~5月の延べ50団体から、6~7月には延べ15団体ほどに減少したという。
 北大は、旧帝大時代からの風景を残す中央ローン周辺の芝生の保護のため規制したという。芝生の維持管理費は年間約3千万円。施設整備の基本計画に携わる北大大学院農学研究院の近藤哲也教授(花卉(かき)・緑地計画学)は「子どもは走り回るので芝が傷む。親子連れならいいが、団体での利用は控えて」と理解を求める。
 中央ローンで2歳の長女を遊ばせていた中央区の高校教員原飛鳥さん(39)は「街中には園庭がない保育園が多い。安心して子どもが遊べる広い場所はここしかない」と北大の対応に疑問を示す。
 札幌中心部のまちづくりに携わる工学院大の倉田直道名誉教授(都市計画学)は「地域に根差したキャンパスと思っていただけに残念。互いに歩み寄り、例えば幼児が草地の維持管理を体験したり、大学も芝生の一部を開放したりする方法もあるのでは」と指摘する。(木村直人)
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