学童保育に異業種参入続々と 私鉄や商社など


神戸新聞
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 共働き家庭の増加などで小学生を放課後に預かる「学童保育」の需要が拡大する中、兵庫県内で、鉄道や流通、教育関連など異業種から参入する企業が相次いでいる。預かり時間を長くしたり、中学受験や英語力向上を目指す教育を提供したりと、親のニーズにきめ細かく対応。特に塾や予備校などの教育サービスが充実する神戸・阪神間で施設を展開する企業が目立つ。(長尾亮太)
■沿線価値高める
 阪急西宮北口駅(西宮市)に隣接する商業ビルの一室。午後5時ごろ、約10人の児童らが全員でにぎやかに工作を楽しんでいた。しばらくすると、それぞれが静かにノートに向かって宿題を始めた。
 阪急電鉄が運営するアフタースクールKippo(キッポ)西宮北口店。今年4月、豊中店(大阪府)に次ぐ2号店として開いた。担当者は、関西の私鉄で初めて学童保育を始めた狙いを「子どもが小学生になると放課後の預け先に困る『小1の壁』を解消し、さらに住みやすい沿線にしたい」と解説する。
 自動車で学校まで迎えに行き、最長で午後9時まで預かる。休校日も営業し、希望に応じて食事の提供や習い事への送迎も実施。宝塚歌劇、宝塚ホテル、六甲山の行楽施設、コンビニなど系列企業と協力し、舞台の小道具制作や洋菓子作りなどの体験活動も行う。
■国際人材を育成
 昨年9月、西宮市内に開業した「東京インターナショナルスクール 夙川アフタースクール」。大手商社の住友商事が世界に通用する人材を育てようと全国に拡大を図る。夙川校は「若松塾」を展開する聖文館(神戸市須磨区)が運営する。
 英語を母国語とする7人が教員となり、施設内では英語だけを使用。スタッフは「学童保育で過ごす時間は長い。将来役立つ英語や異文化を受け入れる力を身に付けてほしい」と話す。
 英会話学校大手ECC(大阪市)も昨年4月、阪急西宮北口駅前に同社初となる学童保育施設を開設した。「地域の教育熱は全国屈指」と照準を定めた西宮で、高いレベルの英語に加えて茶道や習字などの日本文化も学んでもらう。需要の大きさを感じ取り、次は芦屋市に開設予定だ。
■中学受験も視野
 一方で学力向上に力を入れるのは、保育園事業を母体とするドリーミン(芦屋市)。有名進学塾の希学園(大阪市)と提携し、希学園が低学年向けに開発した教材で算数や国語、理科、社会の基礎を教える。中学受験を視野に入れる親から支持を受け、芦屋を皮切りに神戸・岡本、西宮・苦楽園、宝塚と教室を増やしてきた。高学年になると希学園に通う子どもも多く、希学園も「基礎力を身に付けた子どもは伸びやすい」と歓迎する。
 2014年から神戸市東灘区で学童保育施設を運営する生活協同組合コープこうべ(神戸市東灘区)は今年、英会話教室を新たに始めた。学童保育事業への参入が相次ぐ現状について、担当者は「東京で東急電鉄が手掛けたのをきっかけに、多くの事業者が学童保育を『市場』として認識した。子どもを受け入れるだけでなく、どう時間を過ごしてもらうかについて保護者の関心は高まっている」と話す。
■4万人利用 伸びる需要
 兵庫県内で学童保育へのニーズは高まっている。県こども政策課によると、共働きやひとり親家庭の小学生を放課後に学校内や児童館などで預かる放課後児童クラブ(学童保育)に利用登録した児童数は2015年度に4万745人となり、初めて4万人を突破した。5年前より27・7%増え、伸び率は全国の25・8%を上回る。
 一方で、同年度の県内の同クラブ数は895カ所と5年前の12・2%増にとどまり、全国の伸び率13・3%を下回っている。
 15年度から、対象となる児童が従来の原則10歳未満から小学生全体に拡大されたこともあり、定員超過などによる県内の待機児童は15年5月時点で805人(前年比72・9%増)に上る。市町別では尼崎市377人▽宝塚市123人▽姫路市91人▽加古川市52人▽明石市49人▽川西市48人-など。
 同課は19年度には県内の登録児童数が15年度比19・1%増の4万8564人になると推計しており、受け皿の拡充が求められる。
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