いじめ過去最多 早期把握に努めて子供を守れ


YOMIURI ONLINE様
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いじめの被害を防ぐためには、早い段階での実態把握が欠かせない。学校現場の意識改革をさらに進めたい。
 文部科学省の「問題行動調査」によると、小中高校などで昨年度に把握されたいじめは、調査開始以来、最多の22万4540件に上った。前年度より約2割増えている。
 いじめの問題を抱えていた児童生徒の自殺も、過去最多の9件だった。深刻な事態である。
 大津市の男子中学生が自殺したのを機に、いじめ防止対策推進法が制定されてから3年が経過した。被害者が心身に苦痛を感じるものをいじめと幅広く捉え、学校に対策を義務付けたが、被害の根絶には程遠い状況と言えよう。
 認知件数の急増は、文科省の指導により、各地の教育委員会が調査を徹底し、学校現場で掘り起こしが進んだためでもある。
 きっかけとなったのは、岩手県矢巾町で昨年7月、男子中学生が自殺したケースだ。
 生徒は、生活記録ノートで担任にいじめ被害を繰り返し訴え、自殺を示唆していた。担任は問題を一人で抱え込んだ。学校側は「生徒が発する命に関わる情報を教職員が共有できなかった」と認めた。重い教訓である。
 早期把握には、「いじめはどこでも起きる」という危機感を学校全体で持つことが大切だ。生徒が答えやすいように配慮した無記名アンケートを実施する教委では、認知件数が多い傾向がある。
 4割近い学校は、いじめが「ゼロ」と回答している。指導力不足とみられるのを恐れ、表面化を避ける教員がいるのではないか。
 今回の調査では、小学校で暴力を伴ういじめが増えている現状が浮かび上がった。高校ではネット上での中傷などが目立つ。
 いじめは人権侵害である。絶対に許されないことを子供たちに理解させる取り組みが不可欠だ。
 いじめ防止対策推進法は、自殺などにつながりかねないいじめを「重大事態」と位置づけ、教育委員会や学校に事実関係の調査を課している。昨年度は全国で313件の報告があった。
 だが、定義が曖昧なため、学校によって判断が分かれ、対応の遅れを招いているという指摘がある。文科省の有識者会議は、重大事態だと認定する際の基準の明確化や、調査手法の指針の策定などを求めている。
 深刻ないじめを見逃してはならない。法の趣旨を教員に浸透させることが何より重要である。
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