コスト高いから育休延長論? 待機児童対策、労使は反発


朝日新聞様
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低年齢の子どもは保育にお金が多くかかるので、今の制度で最長1年半の育児休業を延ばして家庭でみてもらったらいい――。認可保育施設に入れない待機児童の解決策として、自治体がこんな主張を強めている。一方、25日の厚生労働省の審議会では女性にしわ寄せがいくとして労使双方が反発。議論が混迷してきた。
■首長ら賛成 0歳児のコスト「軽減される」
 論争の発端は、厚労省で9月末にあった待機児童対策の首長会議だった。
 「今のままでは自治体にどんどん保育所整備の負荷がかかる。育休制度を充実させた方が、社会的コストは軽減されるとみている」
 東京都杉並区の田中良区長はこう強調し、2年間の育休義務化を要求。文京区の成沢広修区長は「0歳児の保護者で育休を取る人が増えれば、その分保育士を他にまわせる」と訴えた。
 全国でもっとも待機児童が多い東京都で、とりわけ深刻なのが0~1歳児向けだ。保育士の配置基準は0歳児は3人につき1人、1歳児は6人につき1人だが、4、5歳児なら30人に1人。低年齢向けの保育はより多くの保育士の確保が必要で、人件費もかかる。
 朝日新聞が東京23区に取材したところ、6区が2015年度の決算を元に認可保育所の年齢別1人当たりの運営コストを試算していた。自治体ごとに計算方法が違い単純比較できないが、0歳児は月約45万~37万7千円で、最も高いのは共通していた。
 区長らの要望の背景には、それだけのお金をかけるなら育休をとってもらった方が「経済的」との考えがある。例えば、公・私立の認可保育所、認定こども園、小規模保育所を対象に試算した江東区の0歳児のコストは月39万1千円。保護者が支払う保育料は平均3万1千円で、36万円は国と都、区が負担している。
 一方で、主に労使が折半する雇用保険で支払われる育休給付金は、15年度の平均受給額が月13万5千円で、平均給付期間は10・1カ月。給付期間を延ばして給付金が増えても、保育所で預かるよりコストが抑えられるという理屈だ。
 保護者側に育休延長を歓迎する声もある。目黒区の女性(32)は「選択肢が広く用意された上で、復帰したいと思った時期に復帰できればいい。『1年で必ず帰ってこい』と言われるよりは安心感がある」と語る。(伊藤舞虹、河合達郎)
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