大川小津波訴訟 子供の命を守る教訓に


北海道新聞様
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子供の命を預かる教育現場や行政への大きな警鐘と言えよう。
 東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小の児童23人の遺族が、学校側の避難誘導に過失があったと訴えた損害賠償請求訴訟で、仙台地裁がきのう、遺族側勝訴の判決を言い渡した。
 「学校側は津波の到来を予測できたのに、子供たちを即座に安全な場所へ避難させなかった」などとして、市と県の責任を認めた。
 津波に限らず、自然災害はいつ襲ってくるか分からない。想定を上回る規模になる恐れもある。
 判決を教訓にしなければならない。学校や行政はハザードマップや避難計画の点検を急ぐ必要がある。教職員への防災教育・研修にも力を入れるべきだ。
 子供たちは地震発生後、教職員の指示で約50分間も校庭にとどまっていた。やや高い場所にある川の堤防付近を目指して移動し始めた直後、津波に襲われた。
 児童74人が死亡、行方不明となり、教職員10人も犠牲になった。
 遺族側の主張を認めた判決から読み取れるのは、予想される津波の高さが刻々と高くなっているのに、即座の避難を意思決定できなかった危機管理能力の弱さだ。
 教職員らは無論、子供たちを守るために一生懸命だったろう。
 だが判決は、一部の教職員が早い段階で校庭からの移動を協議、検討していたにもかかわらず実行されなかったと認定した。
 学校の近くにあった裏山へ避難することもなかった。
 一方、なぜそうなったのかについては明確にならなかった。
 訴訟では、教職員のうち唯一生き残った男性の証人尋問が行われていない。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されていたことなどを考慮したとみられる。
 遺族が求めていたのは、真相の究明だ。その意味では、訴訟によらずとも、関係者は可能な方法で、この男性から話を聞く努力を続けるべきではないか。再発防止の手がかりになるかもしれない。
 大川小の被害を受け、各地で校舎を高くしたり、高台に移転する対策が講じられている。
 気になるのは、それが大きな動きになっていないことだ。文部科学省が2年前にまとめた調査によると、道内でも津波浸水が想定される205校のうち、施設整備の予定がない学校が半数を超えた。
 財政事情もあろうが、学校の安全対策は優先度が高いはずだ。各自治体が知恵を絞るとともに、国も手厚く支援してほしい。
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