堺男児不明事件 情報共有し子供の命守れ


産経ニュース様
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行政間で情報が適切に共有されていれば、事件は防げた可能性があったのではないか。子供を守るために、躊躇(ちゅうちょ)はいらない。再発防止のために何ができるのか。徹底的に検証してほしい。
 大阪・奈良の府県境の山中で、所在不明になっていた住民登録上4歳の堺市の男児とみられる遺体が見つかった。
 まず非難されるべきは、両親の行いである。
 男児の児童手当をだまし取ったとして、10月に詐欺容疑で逮捕された後、父親は、昨年12月に男児を暴行し死亡させた傷害致死容疑で、母親は保護責任者遺棄致死の疑いで再逮捕された。遺体の遺棄現場についても父親は虚偽の説明を行い、発見が遅れた。身勝手で許し難い所業だった。
 一方で行政も、子供を守ることができなかった。平成24年、この両親のおいが大阪府の別の自治体で所在不明になり、大阪府警は生活保護を不正受給した詐欺容疑で両親らを逮捕した。おいの遺体は見つからないまま、死体遺棄容疑は公訴時効となった。
 所管する児童相談所は男児を施設に預けたが、25年に同府松原市の両親の元に帰し、両親が逮捕されていた情報を市には伝えなかった。問題のある保護者に子供を戻した判断が妥当だったか。市や警察の関与は必要なかったのか。反省すべき点は多い。
 松原市の対応にも問題がある。両親は再三、男児の3歳児健診の延期を求めた。市職員が自宅を訪ねても「祖父母に預けている」などとかわされ、所在確認はできなかった。昨年12月、両親が堺市に転出した際も、松原市が男児の健診未受診を堺市に伝えたのは3カ月後だった。
 おいの事件を受けて府は、乳幼児健診の受診日を繰り返し変更する場合は虐待の可能性があるなどとする指針をまとめていたが、生かすことができなかった。
 今年5月には、児童虐待防止法と児童福祉法が改正され、家庭に強制的に立ち入る手続きが簡略化されるなど、児童相談所の権限が強化されている。
 虐待は子供の肉体も精神も著しく傷つけ、その死にも直結する。かわいいはずのわが子を虐待する親が存在する現実を忘れず、児相、自治体、警察は情報を密に共有し、あらゆる手段で悲劇の連鎖に終止符を打ちたい。
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