子育て、孤独を感じる女性たち 男性の育休取得2%台


朝日新聞様
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今回のテーマは「子育ての理想と現実」です。女性の社会進出が進み、共働きが増える中、子どもを産み育てることと、働くことの間にどんな壁が立ちはだかるのでしょうか。まずは、子育て体験者から寄せられている多くの疲弊と葛藤の声、制度の矛盾を訴える声、子どもにとって何が大事かという声を紹介します。共働きは増えたのに…
 戦後、子育てをめぐる社会の状況は大きく変わってきました。
 高度成長期に農村部から都市部へ人口が移動し、急速に核家族化が進行。サービス産業の増大など産業構造の転換に伴い、女性が働く機会が増えていきました。1986年には男女雇用機会均等法が施行。当時主流だった専業主婦世帯の数を90年代半ばに共働き世帯が追い越しました。重要な仕事を担い、結婚や出産をしても働き続ける女性が増えています。
 共働きの増加には、経済的な要因もあります。若い世代の所得は伸び悩んでいます。総務省の調査によると、30代の雇用者の年収は、97年には500万~699万円の割合が23.7%と最も高かったですが、2012年には300万~399万円が18.9%と最も高くなっています。経済の行き詰まりを背景に、25~34歳の非正規雇用の割合は15年で男性が16.5%、女性は41.3%と高止まりしています。
 一方、高度成長を支えた「夫が働き、妻は家庭で子育て」という性別役割分業意識は、いまも根強く残っています。16年版の男女共同参画白書によると、6歳未満の子を持つ夫の約7割が育児をしていません。実際に夫が家事や育児に費やす時間は1日67分。先進国で最低水準です。
 背景には、男性中心の長時間労働を前提とした働き方の問題が指摘されています。週60時間以上働く人の割合は、子育て期と重なる30~40代の男性で高いことが分かっています。その中で、独りで育児不安を抱えたり、保育園の順番待ちが続いたりという負担が、女性たちにのしかかっています。15年度の雇用均等基本調査によると、育休取得率は女性が81.5%、男性が2.65%。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、妊娠時に働いていた女性で、育休をとって復職した割合は正社員でも約6割です。
 こうした不安は子どもを授かること自体に影を落としています。1人の女性が一生に産むと見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率は15年で1.46。同年の出生動向基本調査によると、妻の年齢が50歳未満の夫婦に尋ねた理想的な子どもの数は2.32人、実際に持つつもりの数は2.01人と過去最低になりました。
 ひとり親家庭も増えています。男女問わず、それぞれのライフステージや価値観にあわせて望む子育てができる社会へのカギは何か。みなさんと考えていけたらと思います。(足立朋子、及川綾子)
■体力・キャリアに募る不安
 アンケートに寄せられた声の抜粋です。
●「本当は週に2~3日働いて子どもを保育園に預けたいけれどそれでは保育園に入れない。今は仕方なく毎日働いているが、自分の体力がいつまで持つのか不安。夫は深夜に帰ってくるので1人で子育てしている状態。過労死しなければ理解してもらえないと本気で思っている」(東京都・40代女性)
●「子どものことを考えると18時ごろには仕事を終えて帰宅したいが、そんなに早くは帰れない。上司や同僚に言いにくいし、自分だけ仕事量を減らしてもらうのも心苦しく感じる。給料が少し減ってもいいから、早く帰りたい。しかし、子どもができて生活に必要なお金が増える人が給料減るって、なんか悲しい」(愛媛県・30代女性)
●「『小さい子どもがいても構わない』と言われて子どもが1歳過ぎで再就職しましたが、度重なる発熱に欠勤を余儀なくされました。土日にも『風邪を引かせてないか。月曜は確実に出るのか』と会社から電話までかかって来る始末で、挙げ句の果てには『休むなら代理を探せ』とまで言われました。『次、子どものことで急な欠勤があったら、契約更新しない』と言われ、働きにくいと感じました」(大阪府・40代女性)
●「周りの女性を見ていても、産休、育休、時短勤務期間を終え会社に戻っても、きっと望む働き方はできないのだろうな、と、自分のキャリア形成に関して不安を感じます。近くに頼れる身内もいませんし、なおさらです。子供を作ることにも消極的です」(愛知県・20代女性)
●「希望の保育所に預けるために育児休暇を途中でやめ、こども2人とも0歳児4月入所で保育所に入りました。年度途中入所なんて無理だし、1歳児4月入所は狭き門……保育所に入るため出産の時期も調整しました。いつ産んでも、年度途中でも保育所に入れる環境を望みます。ただ規制緩和による保育枠の拡充だけでなく、保育の質も保ってほしいです」(大阪府・30代女性)
●「出産を機に退職してしまうと、いざ社会に出ようと思う時に様々な困難にぶつかる。今更ながら、離職せず、産休取得にしておけばよかったと後悔。3歳までは、家庭でじっくり子どもと向き合い、子ども中心の生活を楽しもう……と思い専業主婦の道を選択した。この3年間は、何にも代えられないが、現状を思うと……」(山口県・30代女性)
●「近隣との関係がない中で孤独に子育てをしている専業主婦もいます。ひとりで家事育児することは精神的体力的にかなり無理があります。就労家庭の子どもの受け入れ先を作ることだけではなく、子育てをしている専業主婦への子育て支援などが当たり前にできるように、企業などへの補助を手厚くし、社会のしくみを変えていくべきと思います」(東京都・40代女性)
●「ワーママの同僚を見て、みんな頑張りすぎて病気にならないだろうかと心配です。育児や家事があればその分仕事量が減るのは当たり前。迷惑など気にせず、この時期は重要な社会貢献しているんだからと平気な顔をし、周りもそれを認めてゆったり構えられる職場の雰囲気が大事だと思います」(神奈川県・40代女性)
●「『子育て』は、誰がやるべきかを夫婦ともに認識するべきだと思います。母親が家事、育児をやり、父親が『手伝う』は、大きな間違いです。仕事に出て、学校行事、地域行事を含む子育てをして、家では炊事、洗濯……女性を『使う』ことしか考えない社会構造はどこかおかしいと思います」(千葉県・40代女性)
●「最近、共働きを推奨する流れが一般的になってきていますが、子育てに関して、母親の代わりは誰にもできないと、強く思います。子供が望むのは、母親との時間、まなざしだと感じます。私が幼少の頃に感じていた、あの寂しい何とも言えない気持ちを味わってほしくない思いでいっぱいになります。家事と育児を、軽く考えている方々が多いと感じます。子供の心が健全に育つためには、何が大切かを考えていきたいです」(神奈川県・40代女性)
●「両親が共働きしないと子育てできるお金が得られないことが問題だと思う。自分がメインで働き、妻が家にいてメインで子育てを担当してやっていけている。完全に分業ではなく、夜や休日は自分も子育てに携わるし、妻も在宅の仕事で少しのお金を得ている。昔ながらの男女の役割分担でうまくできている。扶養手当の削減だとか女性を無理やり労働者にするような、余計なことをしないでほしい」(広島県・30代男性)
●「制限された働き方の中で他者のサポートに入ったりとペースをつかみながら仕事をしている。上司は期待をしてくれているからか早く前線に立って仕事をして欲しいと持ちかけてくるが家庭も仕事もバランスが取れてると説明しても、上を目指せと求められる。子育て期は他者のサポートに徹するという選択肢もあると思うのだが理解してもらえない」(東京都・30代男性)
■男性側の意見も募集
 今回のアンケートでは、女性側から、悲鳴のような投稿が多数寄せられています。こうした女性の現状を、男性側はどう思いますか。ぜひご意見をお寄せください。
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 アンケート「子育ての理想と現実」を11月1日まで、http://t.asahi.com/forumで実施しています。ご意見はasahi_forum@asahi.comでも募集しています。
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