みんなの愛、保育園の門開いた! 重病の3歳児、通園へ


朝日新聞様
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脳の重い病気で、人工呼吸器などのケアが欠かせない滋賀県東近江市の田中彩愛(あやめ)ちゃん(3)が、地元の保育園に通い始めた。自治体は医療的ケア児を支援することになっているが、症状の重い子を預けられる施設は少なく、受け入れは異例。周囲の支えもあり、通園できるようになった彩愛ちゃん。受け皿づくりの一歩として、期待されている。
 大雪となった1月16日朝。母の美由紀さん(38)は車に彩愛ちゃんを乗せ、通常20分の道のりを約2時間かけ、保育園へたどり着いた。医療用の車いすを押し、入園を祝う看板が掲げられた園庭へ入ると、「おめでとうございます」と迎えられた。同じ園に通う長女の瑞希(みずき)ちゃん(5)にとっては待ちに待った日。美由紀さんは「瑞希が『絶対今日じゃないとダメ』と。もう疲れました」と表情を緩めた。
 彩愛ちゃんは仮死状態で生まれ、大脳の表面に細かい溝やしわが多数ある「多小脳回(たしょうのうかい)症」と診断された。寝たきりでけいれんも時折あり、目や口の微妙な動きで感情を伝える。栄養は、体外から胃に入れる「胃ろう」のチューブで注入。気管を切って入れた管で呼吸を補い、1日10回程度のたん吸引も欠かせない。
 「なんであーちゃんと保育園に行かれへんの」
 2015年夏、生まれてから過ごしてきた新生児集中治療室(NICU)から彩愛ちゃんが自宅へ戻った。在宅で面倒を見ようと決めたのは、妹に会えずにさみしがる瑞希ちゃんのためだった。入園は妹思いの姉が発した一言がきっかけになった。
 美由紀さんはスーパー勤めをあきらめ、辞意を伝えたが、上司は「辞めなくていい。1時間でも出勤を」と言ってくれた。24時間の在宅ケアは、訪問看護師や父の恵司(けいじ)さん(33)、新たに同居した祖母と分担した。
 彩愛ちゃんにも変化が現れた。表情が豊かになり、瑞希ちゃんが話しかけると、ニコーッと笑う。けいれんは減ったが、止まらず困った時、瑞希ちゃんがトントンとたたくと治まったこともあった。
■園、看護師確保し態勢
 彩愛ちゃんが通い始めたのは、社会福祉法人が運営する東近江市の八日市めぐみ保育園(園児108人)。医療的ケア児の受け入れ実績はないが、美由紀さんや通っている瑞希ちゃんから希望を聞き、園側が決断。主治医は「集団生活で脳に刺激を与えれば、どんな変化があるか分からない」と入園を勧め、市が昨年4月に内定を出した。
 しかし、受け入れには高い壁があった。人工呼吸器の扱いや、鼻から管で人工的に栄養を流す経管栄養は医療行為にあたり、常駐の看護師が新たに必要になる。園側は5~6人に打診したが「協力したいが、高齢で……」などと断られ、市の募集でも集まらなかった。
 一方、保育士らは「絶対預かる」と、たん吸引の講習を受講し、徐々に準備を進めた。秋になって約10年の看護師経験がある近江八幡市の女性(41)が「チームでやれるなら」と園の求めに応じた。人件費は市の補助金でまかなわれることになり、救急搬送を含めたけいれん時の対応方針などは両親と主治医、訪問看護師らが決めた。
 川上信園長(49)は「子どもは子どもの輪の中でぐんと成長できる。どんな子でも預かる保育園へと変わらないといけない」と話す。
 入園してから2週間。彩愛ちゃ
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