学童保育にも待機児童…スタッフ不足・進まぬ民間参入


YOMIURI ONLINE様------------------------------------------------------------------------------------------------学童保育(放課後児童クラブ)の待機児童が増えている。保護者の就業継続にかかわるため、保育所に続く「第2の待機児童問題」として注目が集まっている。
 学童保育は児童福祉法に基づく事業で、共働き家庭などの小学生が放課後や夏休みに過ごす場として、1997年に法制化された。共働き家庭が増えるに従い、利用者も増加している。
 公立と、民間が運営する施設とあり、16年5月時点で全国に2万3619か所と、前年より1011か所増えた。政府は18年度末までに約30万人分の整備を目指しているが、利用希望者の急増に対応できていないのが現状だ。 厚生労働省が1月16日に発表した調査によると、学童保育を利用する児童は2016年5月時点で前年より6万8450人増え、109万3085人と過去最多を更新。待機児童も前年より262人多い1万7203人で、2年連続で過去最多だった。法改正により、おおむね10歳未満だった利用対象が、15年から小学6年までに拡大されたことも、待機児童増加の背景にある。待機児童数が多い上位15自治体=別表=をみると、大都市圏以外も目に付く。 学童保育は小学校の空き教室や学校敷地内の施設、児童館に設置されるケースが65%を占める。住宅街に新たに開設場所を探す保育所に比べ、設置場所の課題は少ないようにみられている。しかし埼玉県加須市で学童保育と保育所を運営する社会福祉法人「加須福祉会」理事長で、元帝京大教授の村山祐一さんは「学童保育は単なる遊び場ではなく、放課後に家庭の代わりにおやつを食べたりゆっくり過ごしたりする生活の場。場所さえ増やせばいいのではなく、保育所同様に、質の高い学童保育を整備する必要がある」と指摘する。 東京都内の自治体の担当者は「学童保育には保育所のように民間企業が積極的に参入しておらず、需要に追いつかない。待機児童は今後も増えるだろう」と打ち明ける。 子どもの面倒をみるスタッフの不足も背景にある。一定の研修を受けた「指導員」らが中心だが、低待遇や厳しい労働条件などにより、なり手が集まらない。 東京都豊島区の会社員女性(40)は1月上旬、自宅近くの学童保育に出向き、4月に小学校に入学する長女(6)の利用を申し込んだ。結果は3月に通知されるが、担当者からは「希望者が多く、利用できないこともある」と言われた。女性は「待機児童になったら一人で留守番させなければならず、心配です」と話す。 浜松市のパート女性(45)の小学3年の長女(9)は4月から、学童保育を利用できなくなりそうだという。小学1年から通っており、本来は小学6年まで利用できる施設だが、低学年の利用が優先されるためだ。「平日は祖父母を頼って何とかできても、夏休みが不安。学童保育をもっと増やしてほしい」と訴える。 社会福祉法人勤務の堺市の男性(47)は、小学1年の長男(7)が入学時に公立の学童保育に入れず、高齢の両親や友人に預かってもらい、対応したという。しかし居場所が日々変わるため長男は不安定になり、学校へ行きたがらなくなった。そこで昨年10月から、民間の学童保育に入れた。費用は月約5万円と公立の5倍で、負担は重い。

 利用者の急増に伴い問題になっているのが、一つの施設で大勢の児童を預かる「大規模化」だ。厚労省は学童保育の適正規模を「おおむね40人以下」としているが、現状では約3割が46人以上の規模だ。全国学童保育連絡協議会事務局次長の佐藤愛子さんは「大規模施設では指導員の目が行き届かない。施設内が騒々しくなり、子どもたちが落ち着いて過ごすことができない」と話す。 明星大教授の垣内国光さん(子ども福祉論)は「民間事業者が学童保育の設置のために借りる建物や土地の賃借料の補助を引き上げたり、施設あたりの補助基準を上げたりするなど、学童保育を増やすための支援が必要だ」と話している。(竹之内知宣、小野仁、久場俊子)
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