学童保育が足りない 金沢で初の待機児童



中日新聞様
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民間に丸投げの中…希望増に苦慮、利用制限も
富山県にも53人
 共働きやひとり親家庭の小学生が放課後を過ごす学童保育(放課後児童クラブ)。金沢市は2016年度初めて、入所したくてもできない待機児童が出ていると明らかにした。利用希望の増加に受け皿整備が追いつかず、クラブは苦労している。(日下部弘太)
 「おかえり!」。ランドセルを背負って帰って来る子どもたちを、指導員の井上信之さん(47)、和田栄美さん(36)らが迎える。同市田上本町のがんばりっこクラブ。一年生から六年生まで、八十九人の大所帯だ。日々の遊びに加え、親子ハイキング、障害者や高齢者との触れ合い…。活動は多彩。「中学生になっても寄ってくれる子がいる」と和田さん。子どもが成長する場であり、学校とは別の安心な居場所と自負する。
 児童数や共働き家庭の増加で近年、受け入れに苦慮している。これまでの最大八十人から一六年度は九十人に。それでも、姉妹クラブのたがみっこクラブと合わせて三十三人の入所を断らざるを得なかった。子どもに自ら安全を守るよう意識させるなど大人数化への対応を進めてきたが、井上さんは「子どもは息苦しいだろう」とおもんぱかる。
 市内八十八カ所のクラブはすべて民設民営で、中には耐震性に問題のある施設も。対照的に、周辺市町は多くが公設。井上さんたちは公設を望むが、市の担当者は「学童はもともと自主的に始まった事業が広がってきた。民設だからこれだけ数が増えたと思う。地域に任せる方がうまくいく」。新築や修繕の助成も多く用意されていると話す。だが、運営も地域やクラブに丸投げ状態だ。
 そもそも、市は実態把握ができていない。市のまとめで、昨年五月時点の待機児童は五十三人。「クラブが入所を断った人数=待機児童」とした。だが、がんばりっこクラブなどが断った三十三人は全員が他のクラブに入っていた。井上さんらは待機児童対策の研究会をつくり他クラブと連携し受け皿をつくる。
 一方、学年により利用を制限するクラブも。「門前払い」されて待機児童と見なされない「隠れ待機児童」が出ているとみられる。不動寺児童クラブは三、四年生の保護者に対し、一七年度は利用をあきらめるよう促している。ある母親(45)は「娘を自宅に一人で置いておくわけにはいかない。転校も考える」と幻滅を隠さない。
 全国学童保育連絡協議会によると、実態把握の不十分さや隠れ待機児童は全国的な問題。一方で、四年生以上の在籍も増えている。そんな中、市は一七年度から三年生以下しか待機児童に含めない方針。協議会の担当者は「高学年でも保育が必要な家庭はある。保護者のニーズから目をそらしている」と疑問視し、「学童の環境整備は、子育て世代に選ばれる町づくりにつながる」と話す。
 厚生労働省の二〇一六年度調査で、学童保育の待機児童は全国で一万七千二百三人と、過去最多を更新。北陸三県では金沢市以外の石川県はゼロ、富山市は五十一人、同市以外の富山県は二人、福井県はゼロだった。
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