子どもの防災教育に絵本活用


YOMIURI ONLINE様
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身の守り方や避難生活、対応力向上
 子どもの防災教育に絵本を活用する取り組みが広がっている。
 地震の仕組みや震災時の避難方法を説明したり、被災した子どもの心のケアの大切さを伝えたり。絵本で知識を増やし、想像力を高めれば、子どもでもいざという時に対応できるようになると期待されている。
 「ぐらぐら ねているときにじしんがきたら?」
 東京都板橋区の赤塚六丁目保育園で1月中旬、防災に関する絵本の読み聞かせ会が行われ、1~5歳児クラスの約100人の園児が参加した。
 絵本は、全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)が未就学児童向けに作成した。地震が起きた時の対応をクイズ形式で学ぶ内容になっている。全労済の職員が就寝中や食事中などの対応を聞くと、園児たちは絵本のイラストを見ながら、「枕で頭を守る」「テーブルの脚を持って隠れる」と元気よく答えた。
 全労済は2015年5月から、防災絵本の読み聞かせ会を各地の保育所や幼稚園などで続けている。16年末までに全国37か所で実施し、5197人の子どもが参加した。
 絵本の情報サイト「絵本ナビ」編集長の磯崎園子さんによると、防災に関する絵本は地震や津波、噴火、台風など自然災害が起きる仕組みと、その恐ろしさを伝えるものが多い。11年の東日本大震災後は地震関連の絵本に注目が集まり、「被災した人たちの体験や教訓から、震災時の避難方法や避難生活を取り上げたものも目立ってきた」と話す。
 磯崎さんが薦める絵本の一つが、15年1月に出版された「はなちゃんの はやあるき はやあるき」(岩崎書店)だ。東日本大震災で被災した岩手県野田村の野田村保育所の園児の姿を描いたもので、著者は同村出身の詩人の宇部京子さん。
 同保育所は津波にのまれて流失したが、約90人の園児は全員無事だった。毎月行ってきた避難訓練のおかげで、震災時も園児が訓練通りに早歩きで高台に逃げられたからだ。宇部さんは「自然災害はいつどこで起きるか分からない。日頃から災害に備える大切さを、絵本で多くの子どもたちに伝えたかった」と話す。
 被災した子どもの心のケアを目的にした絵本もある。
 熊本市子ども発達支援センターは16年5月、「やっぱりおうちがいいな」という絵本を作った。4月の熊本地震後、「子どもが怖がって家に入ろうとしない」「夜になると怖がって泣く」などの相談がセンターに寄せられたためだ。
 地震後2週間の車中生活から自宅に戻る5歳の男児をモデルに、家族の対応を描く内容だ。「絵本で悩みや不安を視覚化することで、理解が進み、悩みや不安を受け入れられるようになる」と同センターの担当者。絵本は、熊本市のホームページから無料でダウンロードできる。
 絵本学会の事務局長で、東京工芸大学准教授の陶山すやま恵さん(児童文学)によると、絵本を通じて得られる想像力や知識によって、いざという時でも子どもが現実に向き合う力が湧いてくるという。「絵本を通じて親子の会話が広がり、自然に防災について話し合う機会になればいい」と期待を寄せる。
 防災に関する絵本を探すには、図書館を利用するほか、インターネットを使うと便利だ。
 「絵本ナビ」(http://www.ehonnavi.net/)や、日本児童図書出版協会の「こどもの本 on the Web」(http://www.kodomo.gr.jp/)で、「地震」などのキーワードを入力すると、関連する本が示される。

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