勤務していない保育士届け出や「名前貸し」 都が改善指導

ニヤけている男性会社員のイラスト
NHK NEWS WEB様
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東京などで複数の保育施設を運営する会社が、実際には勤務していない保育士の名前を自治体に届け出たり、同じ保育士の名前を複数の施設で使う「名前貸し」を行ったりしていたとして、東京都が改善を求める指導を行ったことがわかりました。
都から指導を受けたのは、東京 港区に本社があり、都内や神奈川県、千葉県などで認可保育所合わせて10施設を運営する会社です。

都によりますと、ことし8月、「補助金を不正に受給している」という告発があり調査したところ、実際には勤務していない保育士などの名前を自治体に届け出たり、常勤として同じ保育士の名前を複数の施設で使う「名前貸し」を行ったりしていたことが明らかになったということです。
都によりますと、複数の施設に名前の届け出がされていた保育士などは、去年4月からことし7月までに18人に上るということです。都内では、必ず施設に配置しなければならない「園長」が不在になっていたケースもありました。都は、運営会社に対し運営の改善や再発防止を求める指導を行い、区や市は、勤務実態のない保育士の登録による補助金の加算分の返還を求める方針です。

補助金が支給される認可保育所については、自治体ごとに毎月、勤務する職員の名簿を提出する必要がありますが、専門家によりますと、届け出をする自治体が複数にまたがる場合、同じ保育士の名前が二重に届け出されていても見抜くのは難しいということです。

保育施設の運営に詳しい保育研究所の村山祐一所長は「自治体をまたいで保育所を運営する場合、監査の主体が異なり名簿の照合ができなくなる。監査の盲点を狙った名前貸しの可能性がある」と指摘しています。

重複届け出が18人 3重届け出も

東京都の調査で、複数の保育所に届け出がされていた保育士などは合わせて18人に上っています。このうち東京・国分寺市の保育所で勤務していると届け出があった園長や保育士など9人は、東京の大田区、墨田区、江東区、中野区、それに横浜市の2つの施設、千葉県市川市の保育所でも同じ時期に2重に届け出がされていたということです。
都によりますと、このうち園長2人と保育士1人は実際には大田区と市川市の施設で勤務していて、国分寺市の施設では勤務の実態はなかったということです。さらに18人のうち2人は3つの施設にまたがって3重に届け出がされていたほか、期間が長いものでは1年間、2重に届け出がされていた保育士もいました。

タイムカードなど書き換えて監査すり抜ける

自治体は、保育施設が適正に運営されているか確認するため定期的な監査を行っていますが、なぜ不正は見抜けなかったのか。都から指導を受けた保育施設の運営会社の元社員2人が自治体の監査をすり抜ける手口を証言しました。

それによりますと、この運営会社では、自治体の監査が入るという連絡を受けて、自治体に届け出ていたうその職員名簿と帳尻を合わせるために、タイムカードなどを書き換えたということです。

書類の書き換えを指示されたという元社員は「不正が見つかると園で働くスタッフに迷惑がかかると思い、しかたなく続けていた」と打ち明けています。

また元社員の1人は、保護者の前で本名を名乗らないよう指示されていたということで、「自分の名前ではなく役割として指示された名前を言わないといけないことがあった。どこから情報が漏れるかわからないと考えたんだと思う」と話しています。

運営会社「深く反省、おわび」

都から指導を受けた保育施設を運営する会社は「大切な子どもを預かる立場として、このような指摘を受けたことを深く反省し、おわび申し上げる。指摘事項を真摯(しんし)に受け止め、改善を進めていく」とコメントしています。

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