保育園からメール、なぜか妻宛て…イクメン、見えた現実

子供たちを見守る保育士のイラスト
朝日新聞様
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 ある日、電通のコピーライター、魚返(うがえり)洋平さん(37)の元に1通のメールが届いた。差出人は入園の問い合わせをしていた保育園。園側とのやりとりは魚返さんがずっと担当してきたが、文頭の宛名はなぜか妻の名前だった。

 「保育園ですら、保活は母親がするものという先入観があるのでは」

 魚返さんは昨年7月から6カ月の育休を取得。同じく育休中の妻と一緒に育児をし、昨年6月に生まれた長女を保育園に通わせるため、保活した。

 住まいは都内でも待機児童数が多い激戦区。保活を成功させるため、計20カ所の園を見学して回った。「育休中じゃなければ到底回りきれなかった。入れればどこでもいいと思ったり、保活を妻任せにしたりする家庭は多いかも」

 建設会社勤めの男性(41)も似たような違和感を感じたことがある。子ども3人の保活に携わり、いま2人を保育園に通わせる。

 「お母さんたち、いいですか?」

 入園式などで園側が呼びかける相手はいつも母親。父親の姿が少ないがゆえと分かってはいるが、「仕事を調整して参加したのに、やっぱりお母さんの世界かという寂しさはある」と漏らす。

「ただ一緒にいる」大切さ実感
 厚生労働省の雇用均等基本調査によると、育児休業の取得率(2016年度)は女性の81・8%に対して男性は3・16%。ただ育休取得で得られるものは多いようだ。

 魚返さんが半年間の育休生活で気づいたのは、育児には明確な区切りがなく、仕事のような「やり遂げた感覚を得にくい」ということだった。子どもの成長を感じつつ、日常のすべてが育児に追われる日々。「曜日感覚が消え生活にメリハリがなくなったりもした。でも、これが子育ての現実なんだと」。

 魚返さんは「育児の達人」じゃなくても「パートナーとただ一緒にいること」の大切さを実感し、ウェブで公開してきた。「相手がいれば大変さは半分に、楽しさは2倍にもなるんです」

 一方、建設会社勤めの男性は「自分の中に見えないお化けをつくらないでほしい」と話す。育休取得を相談したら上司ににらまれないか、早く帰りたいと持ちかけたら出世に響かないか――。未知なる“お化け”のような存在と戦わなくても、「上司や会社に聞いてみたらすんなり通るかもしれません」。

 育児と仕事の両立は確かに大変かも知れないが、「自分自身に言い訳せず、勇気を出して、一歩踏み出してみませんか」と呼びかける。(向井宏樹)

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