園長ら11人 一挙に退職 保育士引き抜き 運営圧迫

子供たちを見守る保育士のイラスト
東京新聞様
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受け入れを縮小し、今は使われていない寺谷にこにこ保育園の一室=横浜市鶴見区で

 横浜市鶴見区の認可保育所「寺谷にこにこ保育園」で、園長と主任を含む保育士十一人が三月末で退職し、四月から運営の縮小を余儀なくされた。園長ら数人は、四月に区内で開園した認可保育所に再就職した。待機児童対策で保育所増設が急がれる中、保育士の引き抜きで既存園の運営が圧迫される、異例の事態を招いている。 (梅野光春)

 「辞めたのは十五人のうち十一人。後任の採用が追いつかなかった」。同保育園の運営会社の渡辺研介社長(30)は苦渋の表情を浮かべる。

 昨年五月、五十代の園長が「区切りを付けたい」と年度末での退職を申し出た。保育士六人も今年一月までに「年度末で辞めたい」と意思表示。四月以降の新規園児受け入れ中止で乗り切ろうと考えていたところ、二月にさらに四人が年度末での退職を希望した。

 在園児全員の継続保育も難しくなり、三月初めに縮小を決定。四月からは新一、二歳児クラスの十九人のみ保育を続け、新三~五歳児クラスの三十七人は、急きょ転園してもらった。

 園長は退職の意思を示した昨年五月の段階で、新設園の園長就任が決まっていた。園長と運営法人の幹部は知人同士で、寺谷にこにこ保育園の関係者によると、園長を除く退職者十人の過半数が新設園に再就職した。運営法人は「取材には応じられない」と説明を拒んでいる。

 市によれば、寺谷にこにこ保育園の給与水準は標準的で、退職理由にパワハラなどはなく、これまでの監査でも問題なかった。四月までに保育士四人を新規採用し、渡辺社長は「さらに保育士を採用できたら、園を元のように運営したい」と希望する。

 一方で市は、来年四月以降は他の法人に事業譲渡するよう要請。担当者は「一度に十一人も辞める事例は記憶にない」と、異常事態だったと認めつつも「採用活動が不十分で、運営にも問題があった。在園児を転園させるなど混乱を招いた」としている。

 「保育園を考える親の会」(東京都)の普光院亜紀代表は「保育士不足が原因で、園の新設時に他園から移ることは少なくないが、一カ所からまとめてというのは聞いたことがない。既存園が立ち行かなくなる場合には、保育士が勤め先を選ぶ自由を確保しつつ、自治体の監督が必要かもしれない」と話している。

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