増える 働きたい母の背中後押し /北海道


毎日新聞様
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 企業が国から補助を受け、従業員や地域住民向けに開設する「企業主導型保育所」の制度ができて、4月で3年が経過した。道内では18市6町で153施設(2月末現在)が開園または開園準備中となっている。企業の関心は高く全国で開設が進む一方で、保育士の不足など取り組むべき課題も多い。【三沢邦彦】

 ★人手確保など目的

 大手コンビニエンスストア・ローソン(東京)を札幌市内で7店経営するエー・ティコーポレーション(保東明彦社長)は3月末、同市中央区に旧店舗を活用した「みるく保育園」を開園した。

 加盟店オーナーが保育園の運営に乗り出すのは全国初。子育て中の店員支援やアルバイトの人手確保を目的にしており、開所式にはローソンの竹増貞信社長が足を運んで「働きたいお母さんの背中を後押しし、笑顔を提供できる場所にしたい」と話した。

 従業員の子ども12人(0~5歳)と、近隣に住む子ども7人(0~2歳)の受け入れを予定。保東社長は「保育園を求めている人の声に応え、新たな雇用創出の機会として全国に発信したい」とアピールする。

 ★保育士確保が課題

 企業主導型保育所制度の運営を委託されている公益財団法人「児童育成協会」(東京)によると、全国で助成が決定している保育所は2365施設(定員5万4645人分)。道内153施設のうち、札幌市に106施設が集中している。

 道内で希望しても認可保育所などに入れない待機児童は、25市町村の1515人(1月1日現在)。このうち札幌市は最も多い946人だった。札幌市保育推進担当課の伊藤弘己課長は「児童の受け入れ枠に余裕があっても、保育士が足りずに入所を断るケースもある」と説明する。

 その受け皿としても期待される企業主導型だが、こちらも保育士の確保は容易でない。

 児童育成協会が昨年4~9月に全国432施設に立ち入り監査を実施した結果、約7割の施設が保育士の人数を満たしていないなど指導項目があった。

 道内では24施設に監査が入り、指導項目がなかったのは4分の1の6施設のみ。多くに保育計画の不備や嘱託医との契約をしていないなど改善すべき項目があった。協会はホームページで施設名と監査結果を公表し、安全性の確保につなげたいとしている。

 ★質担保へ証明書

 札幌市は年1回、企業主導型を含む認可外保育所の立ち入り調査を行っている。昨年度の調査対象は223カ所。問題がない場合は「指導監督基準を満たす旨の証明書」が交付される。

 また市は2016年10月、「市保育士・保育所支援センター」を開設。資格はあっても働いていない「潜在保育士」や保育士志望の学生らを施設にあっせんしており、17年度までに156人が採用された。

 市子育て支援課の中村郁子指導担当課長は「利用者が安心して子どもを預けられるように、保育の質を担保したい」と強調した。

 ■ことば

企業主導型保育所
 主に従業員向けで認可外の事業所内保育施設。従来より公的補助を拡充し、駅の近くや住宅街など事業所外にも設置できる。複数の企業による共同設置も可能。原則として総定員の半分まで、企業外から受け入れる「地域枠」を設けることができ、政府は待機児童の有力な受け入れ先と位置づけている

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