異年齢保育 社会性育てる 金沢の園 3割導入

ピアノに合わせて踊る子供たちのイラスト
中日新聞様
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 保育所などで、年齢の異なる子を同じクラスにする「異年齢保育」が注目されている。行政の担当者によると、金沢市内では保育所・認定こども園の約三割、富山市内では約五割が行っている。過疎地では昔から行われていたが、少子化で一人っ子が増えたことなどから、導入する保育所が全国的に増えているという。(押川恵理子)

少子化背景で拡大
 「また作ってあげる。泣かないでね」。積み木の家が崩れて泣く女の子に年上の男の子が声をかけ、そっと頭をなでた。「第一善隣館保育所」(金沢市野町)は二年前から夏などに試行し、今春から本格的に異年齢保育を始めている。

 三歳児(年少)、四歳児(年中)、五歳児(年長)の計四十三人を三クラスに分ける。同年齢だけで遊ぶ時間も設けるが、基本は三~五歳児が一緒に遊んだり、食事をしたりする。

 宇野孝一施設長(67)は「年上は年下を思いやり、年下は年上にあこがれていろんなことに挑戦する。人間関係の刺激になる」と話す。主任保育士の栗山みどりさん(54)は「きょうだいのいろんな立場を体験できる。自己主張や我慢も自然と学べると思う。同年齢の中で自分の気持ちを出せない子が年下の子と楽しく遊ぶなど、『居場所』も見つけやすい」と語った。

 クラスにいる子ども人数からすると、各クラスに保育士は一人でもいいが、二人ずつ置いている。保育士不足の中、人繰りが大変だが、それでもメリットが大きいと宇野施設長は考えている。

 「額小鳩こども園・第二こども園」(金沢市三十苅町)は異年齢保育を始めて七年目になった。前田武司理事長(54)は「同年齢でも実際は一年ぐらい年の違う子もいる。異年齢保育は、無理をしないで、その子らしくいられる」と話す。

 一方、富山市では少なくとも三十年以上前に異年齢保育を始めた。市こども支援課の担当者によると、子どもの成育によい影響があると考え、現在では全四十一カ所の市立保育所で行い、民間の保育所でも約四分の一が取り入れている。

子ども同士課題解決 評価
金大・滝口教授
 金沢大の滝口圭子教授(発達心理学)は「異年齢保育の良さの一つは、大人が『背景』に下がれること。子ども同士で課題を解決する機会が半ば必然的に確保される」と評価する。

 「『生きる土台』をつくる幼児期に、社会性や自尊心を育てたい。同じ年の集団だけにいると、文字を書ける、書けない、といった『できる』『できない』の評価にとらわれてしまう」

 異年齢保育では、「年長のクラスで目立たなかった子が、年少の子を教えて、やさしさを発揮する。その姿を見て、周りの評価が変わったりする」。かつては一人っ子が少なく、地域の子どもが年齢を超えて集まって遊んでいた。「子どもが育つには、子どもに任せる時間と空間が必要です」

 ただ、専門家による異年齢保育の研究は始まったばかり。年下が年上に頼りすぎてしまうといったデメリットもあるという。




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