名護市の保育無償化 認可外適用 具体策なし 保護者ら不満、交付金使えず

保父さんと子供のイラスト
琉球新報様
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 【名護】沖縄県名護市が9月から実施予定の幼児教育・保育料無償化で認可外園が対象外になっている件で、選挙で渡具知武豊市長を応援していた関係者からも「不公平だ」「リップサービスではいけない」とする不満の声が上がっている。公約の目玉として打ち出された保育料無償化だが、認可外の具体策はまだない。認可園に入れず待機児童となった子どもを認可外園に通わせている家庭もあり、不公平感がさらに増すとの危惧も出ている。

■支持者から不満

 「これだと市民は納得しないはずですよ。利用者から、自分たちも補助してくれとの不満が出るはずだ」。選挙で渡具知市長の後援会長を務めた北部地区医師会の宮里達也理事は、認可外が対象から外れていることに憤る。医師会は、医師や看護師らの乳幼児を午前7時半から午後6時半まで預かる認可外園を運営している。年間2千万円を医師会が負担し、利用者の保育料を2万5千円以下に抑えている。

 本島北部は医師不足が続いており、医療従事者を確保する目的で園を設置した。「病院機能を維持するための重要な措置。認可外が対象とならないのは、極めて不満だ」と話し、市にも申し入れしたが現状は「認可外は対応できない」との回答だった。渡具知市長は取材に対し「認可外も対応できるようにする」と明言しているが、実施時期は決まっていない。渡具知氏を支援した経済関係者も「口先だけではいけない。素早く実行するのが政治家の役目だ」と強調する。

■市幹部「難しい」

 市内の認可外園に通う保護者や施設運営者からも「公約に掲げたのにどうして無料にならないのか」との不満の声が上がる。国が来年10月に実施予定の保育料無償化の実施時期は、「公平性の観点」から認可と認可外園は同一日になる見通し。国も当初は認可園のみの無償化を想定していたが、認可園に入れず認可外を利用する人や、与党からも公約に反するとの反発があり、一転して認可外も無償化の対象に含まれるようになった。

 渡具知市長は、再編交付金を活用した9月からの保育料無償化を大々的に打ち上げたが、再編交付金は個人給付はできない仕組み。そのため、仮に認可外園の補助を本年度中に決めたとしても、再編交付金で償還制度は実施できない。その場合は、市の一般財源から捻出する必要がある。市幹部は「財源がない中でどこまでできるのか。難しい」と頭を抱える。

 9月の市議選を見据えて、スピード感を持って打ち出した保育料無償化だが、市民から漏れる「不公平」の声にどう向き合うか。渡具知市長の手腕が問われている。
 (阪口彩子)

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