課題多い教育・保育の無償化

千円札のイラスト(お金・紙幣)
日本経済新聞様
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安倍晋三首相が昨年の衆院選で公約した教育・保育の無償化の具体案が固まった。「骨太の方針」の原案に盛り込まれたが、なお検討の必要な課題は少なくない。

 幼児教育・保育の無償化は、3~5歳児の全員と住民税非課税世帯の0~2歳児を対象に、2019年10月から実施するという。

 焦点となったのは認可外の保育施設に通う子の扱いだった。保護者の就労などで保育の必要性がある場合は、上限額を設けて支援するとした。認可施設に入れず、やむなく利用するケースは多い。公平性を考えれば妥当だろう。

 問題は認可外の質の確保だ。面積や人の配置など一定の基準を満たす施設を対象とするが、満たしていない施設も5年間の経過措置を設けるという。自治体の指導監督の強化や認可への移行支援など、質を高める対策が不可欠だ。

 一方、3~5歳児で所得制限がないのは納得がいかない。所得に応じた負担軽減策はすでにあり、今回、恩恵が大きくなるのは高所得者だ。無償化に多くの財源を充てるより、保育拡充で待機児童を解消することを優先すべきだ。

 大学などの高等教育では、住民税非課税世帯を中心に、年収380万円未満の世帯の学生を対象に授業料や生活費を支援する。非課税世帯では、国立大に通う場合に授業料を全額免除し、私立大は一定額を減額する。国が授業料を肩代わりし、卒業後に「後払い」する制度も検討する。

 ばらまき色を薄め、家庭の事情で進学できない若者を重点的に支援する方向は妥当だ。

 ただ、無償化の対象となる大学などの要件には疑問符がつく。実務経験のある教員の授業が1割以上、複数の外部理事の任命などを求めている。だが、大事なのは形式的な基準ではなく経営や教育内容の質のチェックだ。

 専門機関による「認証評価制度」を厳格に運用し、低評価なら支援対象から外すような仕組みが要る。無償化を定員割れした大学の救済手段にしてはならない。

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