ヤフー、企業内保育所「HUTTE」を開所! 特徴は500冊の絵本と「手ぶら登園」


親子の二人三脚のイラスト
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●電車通勤できる?遊び場はある?
ヤフーは6月26日、東京ガーデンテラス紀尾井町内に7月2日に開所する、同社の企業内保育所「HUTTE(ヒュッテ)」の開所式を行った。「おはなしとどうぶつ」をテーマとした施設内には、壁や天井いっぱいに絵本作家・しのだこうへい氏が描いたさまざまな動物の絵がデザインされている。通勤などに不安を感じる「企業内保育所」だが、どのよう工夫がなされているのだろうか。

○「手ぶら登園」で通勤の負担を軽減

同施設では、ヤフー社員の子どもを対象とした月ぎめ保育(0~2歳)と、一時保育(未就学児)を行う。基本保育時間は7~18時、延長保育は20時までとなる。希望者にはオムツを保育所で用意し、洋服や布団なども洗濯してくれる「手ぶら登園」を導入し、電車で登園する利用者の負担軽減に努めるという。

同施設の運営を担うパソナフォスターの代表取締役社長・長畑久美子氏は、「通勤について心配する声もありますが、自宅近くの保育園に預けた場合、帰宅途中にお迎えに行って、帰るとすぐに夕飯の支度などをしなければいけないということで、なかなか子どもとスキンシップをする時間が少ないと思います。でも当施設では『手ぶら登園』を導入したことで、親御さんは両手が空くんです。この両手は子どもたちを抱きしめる手になります」と、挨拶の中で述べた。

式後の質疑応答に対応したヤフー政策企画本部・友成愛氏も「子どもを連れて毎日電車に乗るのはたしかに大変です。しかし、弊社には時差・時短勤務はもちろん、フレックス制度など勤務制度が充実していますので、そういった制度を活用すれば大丈夫だろう、ということで開所を決めました。それがなければかなり難しかったかもしれません」と話した。

オフィスビルが立ち並ぶ都会に保育園をつくることに関しては、「都市部に保育園をつくった場合、園庭や緑についてのお声を聞くことがありますが、今回近くに緑のある公園もありますし、そういったことは問題ないと思います」と前述の長畑氏は話す。

また、同施設が入居する東京ガーデンテラス紀尾井町を運営する西武プロパティーズの取締役常務執行役員・齊藤朝秀氏も、挨拶の中で「この建物のコンセプトは『緑と歴史』です。4階にビオトープや植栽、お花を植えて季節の彩りのある庭をつくっています。敷地の中はもちろん車も通っていませんので、子どもたちにはこの中をのびのびと駆け巡ってもらえればと思っております」とにこやかに述べた。

●プロが選んだ500冊もの絵本
○1冊1冊が大切な宝物となるように

同施設で特徴的なのが、施設入り口や保育エリアに置かれたたくさんの絵本だ。東京子ども図書館の協力により、約500冊を配備。子どもを預けていない社員にも貸し出しを行う。

同館の理事長・張替恵子氏は「今回選書にあたって、乳幼児向けの本が70冊あまり、3~5歳向けが120冊、年長~小学校低学年向けが210冊、絵本から卒業する頃のやさしい読み物が40冊、親御さん向けのブックリストやガイドブックなどを10冊ほど揃えました。ここに来るお子さんの多くは0、1、2歳ということで、本に親しむという意味ではまだ助走段階ですが、絵の美しさやことばの気づきなどを感じてもらえたらと思います。その先のお子さんについては、社員のみなさんにここのコーナーを利用していただけたらうれしいと思います」と話した。

「現在子どもの娯楽は多様化して、生活は忙しくなる一方です。子ども時代に逢える本というのは、数が限られています。ですから、その1冊1冊が大切な宝物となるように、と願いながら選びました」と張替氏が話すように、ただ子どもを預けるだけの施設ではなく、子どもたちの豊かな感性を伸ばす工夫を感じられる。

月ぎめ保育の定員は12名。今年2月の時点では満員となったが、「認可保育園に落ちたこと」が入所条件となるため、4月に認可に受かった4名を除く8名の子どもたちが、7月からこのHUTTEに通う。
○復職率96.1%のヤフーが抱える課題

ヤフーの代表取締役社長・川邊健太郎氏は冒頭の挨拶で、「現在ヤフー社員の産休・育休後の復職率は96.1%ですが、さらに働く環境を良くしていくためにも、これを100%にしたいと強く考えております。これまでも時短・時差勤務のほか、育児や介護を行う社員を対象に、週3日、4日勤務が選択できる『えらべる勤務制度』などを採用してまいりました。その一方、子どもの預け先が決まらず復職できない社員や、自宅や職場から離れた施設に預けるしかなく、日常生活に支障をきたしている場合もあります」と話した。

同施設は、こういった社員たちの産休・育休後の復職、継続就業支援を目的とし、内閣府の「企業主導型保育事業」の助成金を活用して開設・運営される。

挨拶を行った内閣府男女共同参画局長・武川恵子氏は、「日本の女性活躍が遅れた原因の1つが、継続就業が困難であることでした」と話す。

「人口減少にも関わらず、この5年間で就業人口は約250万人増加し、その8割が女性就業者になります。今後も女性の就業者は増加すると見込まれており、それに伴い、政府では2020年度末までにさらに32万人分の保育の受け皿の整備を目指しています」と武川氏。そのために大きな役割を果たすのが、今回のHUTTEのような「企業主導型保育」だ。

自身も保活に苦しんだという前述のヤフー社員・友成氏も「弊社がこういった企業内保育所をつくったことで、ほかの企業にも広がって、少しづつ待機児童問題が解消されればと思います」と話した。
(安藤おもち)

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