報酬改定で揺れる「放課後デイサービス」 実態無視で憤りの声も

特別支援学校のイラスト(私服)
AERAdotさま
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1万超の施設に約17万人もの障害のある子どもたちが通う「放課後デイサービス」。障害児の発達支援に欠かせない役割を担ってきたが、今年4月の報酬改定によって大幅減収の事業者が続出し存続の危機に瀕している。

 障害のある子どもの放課後保障全国連絡会(全国放課後連)のアンケートによると、今回の報酬改定で、49%の事業所が人件費削減、36.2%が人員削減の対応をし、活動内容を見直す事業所は32.9%。廃止の危機も2割にのぼる。

 大阪府岸和田市で放課後等デイサービス(放課後デイ)事業をおこなうNPO法人まんまるでは、正職員の給与を1割カットし、これまで夏と冬にそれぞれ給与1カ月分出していた一時金も一律10万円になった。安藤長理事長は、

「そうしなければ子どもたちが安心できる居場所を守れない。スタッフも子ども10人に7人程度必要なのに、4~5人まで減らさなければならないだろう」

 と不安を吐露する。

 名古屋市内で活動するNPO法人あしたでは2カ所ある事業所を1カ所にまとめた。加藤透副理事長は言う。

「1事業所あたり200万円の赤字が見込まれ、一つ閉鎖せざるを得なくなった。子どもたちのために一つだけでも必死で生き残らないといけない」

 立正大学社会福祉学部の中村尚子特任准教授も懸念する。
「今回の改定は障害のある子どもの実態を全く無視した制度にますますなろうとしている」

 全国放課後連では、6月12日に緊急集会を開き、報酬改定の問題点を指摘し、厚労省に、各市町村が判定をし直すよう通知を出してほしいと要望した。知的障害のある8歳の子どもが都内の放課後デイに通う藍さとみさんは訴えた。

「うちの子は『かたつむりクラブ』(東京都大田区)に通うようになってお友達の影響を受けて言葉も出てきたし、苦手なことにチャレンジする気持ちも芽生えた。本当に大切な場所。今回の報酬改定で活動が縮小されたり人件費が削減されたりするのは憤りを感じます」

 厚労省の担当者は取材に「事業所と市町村の認識が合っていないということは把握している」と話し、各市町村の判定方法や報酬区分について6月中に実態をとりまとめ、具体的に助言するなど市町村を指導していくという。だが、全国放課後連の真崎尭司事務局次長はそもそもの問題点を指摘する。

「指標該当児が半数を超えるかによって収入が大幅に増減することが毎年続けば、放課後デイの事業所の経営がゆらぎ、子どもに安定した場を提供できなくなってしまう」

(編集部・深澤友紀)

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