保育園・幼稚園の無償化で「待機児童問題」がさらに悪化するジレンマ

待機児童のイラスト
マネーポスト様
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安倍晋三首相(63才)が3選し、安倍首相とともに歩む「これからの3年」で私たちの生活は大きく変わることになる。子育て・教育の分野に、どのような影響があるか見ていこう。

 今年6月に閣議決定された「骨太方針」の「人づくり革命」でその全貌が明かされた幼児教育・保育の無償化。

 少子高齢化を北朝鮮の脅威と並ぶ「国難」と位置づける安倍首相肝いりの目玉政策として、幼児教育・保育の無償化は、予定よりも半年前倒しされて2019年10月から全面的に実施される。同月に予定される消費税率10%への引き上げに合わせて、子育て世帯の負担を軽くする狙いがある。

 その内容は以下の通りだ。まず3~5才のケースでは、幼稚園や認定こども園を利用する子供は、1人あたり月2万5700円までの補助が出る。認可保育園を利用する場合は全額無料となる。

 同じ3~5才でも認可外の施設を利用する場合、ひと月上限3万7000円まで額がアップする。一般的に認可外は認可施設より料金が高いためだ。

 0~2才は住民税非課税の世帯なら幼稚園、認可保育園、認定こども園が無償、認可外保育園は上限4万2000円の補助が出る。

「無償化は世界の流れなので必要なことですが、問題点もあります」と指摘するのは、待機児童など保育問題に詳しいジャーナリストの猪熊弘子さんだ。

「来年10月から最初の5年間を経過期間として、施設の基準を満たしていない認可外施設も補助の対象にすることが最大の問題。現実的に基準を満たしていない施設は運営面の拙さから保育事故が多く、子供が亡くなるケースもあるため、預ける子供の安全面が不安です」

 そして、無償化を進めれば「待機児童問題」はさらに悪化すると猪熊さんは話す。

「無償化で子供を預けたい人が増え、待機児童も増えるでしょう。保育園の数が増えなければ待機児童は解消しませんし、保育士不足など課題が多い。また、日本が無償化の対象とする保育時間は諸外国よりはるかに長く、親の長時間労働を減らすための『働き方改革』とは矛盾しています。無償化と待機児童解消とは全くつながりません」

 2020年からは、高等教育の無償化も始まる。こちらは住民税非課税世帯の学生を対象に、国立大学は授業料約54万円と入学金約28万円を免除し、私立大学は授業料最大70万円を減額して入学金は約25万円まで支援する。

 また年収300万円未満の世帯は非課税世帯の3分の2、300万~380万円未満は同3分の1が支援される。オールアバウトの教育資金ガイドの豊田眞弓さんは話す。

「貧困層の子供が高等教育を受けられず、親子間で貧困が連鎖することが世界的に問題視されるなか、今回の無償化は評価できます。今後は年収380万円以上の中間層まで対象を拡大することを期待したい」

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