なお見通せぬ待機児童ゼロ

待機児童のイラスト
日本経済新聞さま
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希望しても保育所などに入れない待機児童の数が4年ぶりに減少した。だが、入れない子どもは、今なお多くいる。

 政府は2020年度末までに待機児童をゼロとする目標を掲げる。今回の減少は前進だが、達成が見通せたとはいえない。

 厚生労働省によると、18年4月1日時点の待機児童数は、前年より6千人以上少ない1万9895人だった。2万人を割り込むのは08年以来、10年ぶりだ。保育サービスの量がこの1年で約11万人分増えたことが効いた。

 ただ、いまの待機児童数が、真の保育ニーズではない。例えば、入所が難しいために最初からあきらめて申し込まなかった人は、この数字には入ってこない。19年10月からは幼児教育の無償化が始まる。これにより入所希望が一層、増える可能性もある。

 政府は女性の就業率のさらなるアップを見越し、20年度までの3年間で32万人分を整備する。うち6万人分は企業が従業員向けにつくるもので、26万人分が自治体の拡大分だ。まずはこれらを着実に進めなければならない。

 気になるのは、自治体の現時点の計画が約23万人分にとどまることだ。計画はこれまでも、当初は低く見積もられがちだった。つくりすぎはもちろん問題だが、住民の希望をきちんと把握できているだろうか。特にどのエリアに必要かなどを確認しながら、計画を常に点検してほしい。

 保育サービスを増やすうえで大きなネックになっているのが、用地不足だ。比較的、機動的に整備できる小規模な施設を増やすなどの工夫も要るだろう。

 幼稚園が果たせる役割も大きいはずだ。預かり保育の拡充や、保育所の機能を兼ね備えた「認定こども園」への移行などで、地域の子育て世帯を支えてほしい。

 良質な保育サービスは女性の就労を支え、少子化対策ともなる。待機児童解消は長年、先送りされてきた。保育人材の確保策を含めあらゆる智恵を絞りたい。

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