認証(認可外)保育園がなくなる? これから表面化する新たな保育園問題

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BLOGOS様
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このままでは認可外保育園は続けられない。あと1,2年で閉園が大きな問題になりますよ…。
 ある民間保育園事業者から聞いた話だ。結論から言えば、認可外(認証)保育園の経営ができなくなってきているからだという。その理由は、大きく3つある。

■保育士が認可に集中
 現在、保育士の処遇改善への補助金が国から出されているが、基本的に認可保育園が対象。認可外保育園の保育士が対象となっていない。そのため、認可外を辞めて給料の高い認可へ移る保育士が急増している。ただでさえ保育士不足なのに、これでは認可外保育園の保育士がいなくなってしまうのが理由のひとつだ。

 保育園は大きく分けて、国の基準をクリアした認可保育園と認可外に分かれ、認可には国から補助金が出されている。認可外でも、自治体によっては独自の補助金などがある。その代表格が東京都独自の基準をクリアすることで都から補助金がある認証保育所だろう。今回はこの認証も大くくりとして認可外としている。

 このような状況で、認可と認証ともに運営している大手の民間会社では、社内の同じ保育士なのに認可と認可外給料に差が出てしまうと保育士の不満が高まってしまい、認可への異動ができなければ辞められてしまうことから給料の差額を支給しているという。短期間なら親会社の負担でやりくりができるが、この状況が続けば、経営上成り立たなくなり認可外は閉園せざるを得ないというのだ。

■家賃と定員割れ
 二つ目は、認可外保胃園は何年か続けていくと、細かな改修に加え大規模改修が必要となってくる。自社物件なら自ら行うので話は別だが、賃貸物件であれば契約更新時になると改修費をどうするかが大きな問題となってしまう。

 もし、大規模回収が必要で、その分を賃貸料に加算して値上げとなると、経営上、大きな負担となるため、移転や閉園を選択せざるを得ないのだという。建物の所有者(大家さん)が保育園を好ましいと思わないケースでも、同様のことは考えられる。

 三つ目は、地域差が大きいとしていたが、認証保育園に入園申し込みをしていても、4月の入園間際に辞退する問題もあるという。

 4月近くになり認可園に入れた場合などが想像できるが、この数が申込者数の3分の1になることもあるそうだ。さらに、4月以降になってそこから3分の1が辞めてしまうケースもあるという。

 認証保育園は補助金の関係から40人の定員となることが多い。その3分の1となれば約12人。28人でのスタートとなる。そこからさらに3分の1の9人が減るとなれば、19人となり定員の約半分となってしまう。4月の新年度から応募をかけても、保育園の行き先が固まった家庭は多く、保育園に入れず育急を取るケースもあり新入園児がすぐに集まることは考えにくい。

 入園を辞退する理由はさまざまだと思うが、保育園側から考えれば、年間を通じて通園してくれるか分からない状態で保育園を運営するのはリスクが大きすぎることになる。
 そうなると、こちらでも経営が成り立たなくなり、閉園となるのは言うまでもない。

■自治体対応の問題
 利用する立場からすれば、認可と認可外のどちらを選べるかと言われれば、保育料が安く施設面積に余裕のある認可を多くの人が選ぶのは当然だろう。認可保育園が増えるのは多くの人が望んでいる。
 しかし、待機児が大きな問題となり、とにかく今すぐ作ってくれと自治体に言われて認証保育園を開園しても、今度は上記のような理由で閉園を考えると自治体の態度はまったく違ってくるという。何のフォローもないのだという。

 財政的な支援とまでは言わないが、子どもの将来数などを想定し、どの程度の認可外保育園が必要なのか。ひとつのエリアで複数の園の閉園が想定された場合、順番や手順をどうするかを考えるべきではないかと話されていた。保育園の開設計画ではなく閉園計画といえばいいのだろうか。

■振り出しに戻る保活
 そして、ここにはさらに問題が隠されている。

 それは、閉園となる認可外保育園に通っている子どもの問題だ。保活を続けてやっと入れた認可外保育園が閉園となった場合、また保活を始めなくてはならないからだ。

 認可保育園への入園希望者は、利用調整が行われ入園の可否が決まる。いわゆる、点数によって可否が決まるのだが、廃園する保育園の子どもへの対応がどのようになっているかも問題だ。

 自治体によって異なるが、例えば武蔵野市の場合、「保育施設が廃業する場合」に5点加点するとしている。しかし、5点を加算されたからといって、必ず認可園に入れるとは限らない。1歳児や2歳児であれば、ただでさえ定員が少ない狭き門であるため認可園に入れる保障とはならないからだ。



 振り出しに戻ってまた別の認可外を探すことになる可能性が出てくることになる。入園した先の認可外にも廃園の可能性とがるとしたら、どうだろう。とても真情穏やかに暮らせるとはならないだろう。

 しかも、この廃業する保育施設は、認可外を含んでいるのか、認可だけなのか不明確だ。そもそも、保護者の状況などによって「保育に欠ける児童」を自治体が保育するのが認可保育園でもある。認可外は、「保育に欠ける児童」でなくとも預かることができるので、自治体の責任の範囲外と考えてしまうこともできる。そうなると廃園する認可外保育園の子どもには点数は付かない、とも考えられる。
 武蔵野市の判断は現時点で不明確だが、どこの自治体でも問われる問題だ。



■認可外を必要とする家庭
 認可外がなくなってもすべてが認可保育園になればいい、と考える人もいるかもしれない。

 だが、認可外ではないと利用できない家庭もあることも考えるべきだ。
 例えば、勤務が夜遅くなる家庭では、夜まで開園し、駅から近い認証保育園でなければ利用できない。病院や企業内にある保育園も認可外であり、保育士がいなくなれば、困る家庭が出てくるだろう。認可では受け入れができなかった障がいを持った子どもを受け入れるケースもある。
 数は少ないかもしれないが、困る子ども、家庭があることは忘れてはならない。

■保育士格差
 ある民間保育園事業者からの警告のように、1,2年の間でこの認可外保育園の閉園問題は大きくなるのだろう。事実、閉園をすでに公表している園が出てきており、武蔵野市内にもある。

 閉園のさい、1,2年の猶予を持って閉園する園もあれば、即座に閉園する園も当然でてくるだろう。猶予期間をつくればその分の赤字は増えていく。経営で考えれば、すぐに閉園したくなるのは容易に想像がつくからだ。赤字が耐えられなければ、倒産となり、ある朝突然に閉園となってしまうことは、すでに事例があるので、現実的な問題だ。

 そのときのための対応策を自治体は考えなくてはならない。自治体に突きつけられた問題だ。
 このことだけでなく、認可、認可外で保育士の給料に差が出ることがより大きな問題ではないだろうか。同一労働同一賃金との話題が出ていたが、同じ保育士に格差をつけてしまう政策の見直しも必要だ。

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