「子育てタクシー」広がる 幼稚園送迎などで共働き世帯増 青森

タクシーに乗る家族のイラスト
毎日新聞さま
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子供を連れての買い物や保育園への送迎など、子育てを交通面でサポートする「子育てタクシー」。青森県内では日乃出タクシー(青森市)が5年前にサービスを始め、登録者は約750人に上る。共働き夫婦や乳幼児連れの親、出産を控えた妊婦などを中心に利用が広がっている。【一宮俊介】

 「お迎えに来ました」。11月下旬の午後2時過ぎ、日乃出タクシーの運転手、川井省三さん(68)が、青森市内の幼稚園に風晴幸輝ちゃん(6)を迎えに来た。園で名前の確認を受け、一緒にタクシーへ。後部座席に取り付けたチャイルドシートに乗せると、ゆっくりとドアを閉めた。

 自宅までは約5分。川井さんは後部座席の様子に注意しながら車を走らせる。降車の際も幸輝ちゃんの手を握り、玄関まで送り届けて曽祖母に引き渡すと、ホッとしたように表情を緩ませた。

 「子育てタクシー」は、「全国子育てタクシー協会」(横浜市)の認定を受けた会社が提供するサービス。運転手は、子供の救命救急や妊婦への対応などを学ぶ講座のほか、保育園での実習も受ける。全国で148社が登録されている。

 日乃出タクシーが県内で初めて子育てタクシーをスタートさせたのは2013年11月。導入を決めた福士靖子社長(56)は、自身も仕事を途中で抜けたり親に頼んだりして、子供を塾や部活動に送り届ける日々を経験した。

 「いつもバタバタで、送迎中に車に乗せているのが息子か娘か分からなくなる時もあった。途中で仕事を抜けられないアルバイトの人はもっと大変なはず」。仕事と子育てを同時にこなす大変さを体験していたからこそ、協会の取り組みを知った時に強く共感したという。

 ただ、社内には当初、子供だけをタクシーに乗せることに不安を感じる乗務員もいた。福士社長は、自ら教習所に通いタクシーの運転に必要な2種免許を取得。乗務員と一緒に協会の講座を受け、導入に向けて率先して動いた。

 現在、同社で認定を受けた運転手は、約40人の乗務員のうち福士社長を含む12人。利用者は、通園など子供だけの送迎や、夜間の急な発熱時の通院など、四つの中からコースを選んで事前に登録。利用したい時に予約する。通常の運賃以外に追加料金はかからない。

 幸輝ちゃんの母・ひろ子さん(27)は、利用を始めて約3年。平日は午後6時までが仕事で、同居する幸輝ちゃんの祖母が急に迎えに行けなくなった時などに利用する。「焦って仕事を終わらせて迎えに行くより、子供が家で待っていてくれる方が安心」と話す。

 共働き世帯の増加など子育て環境の変化もあり、ニーズは年々高まっている。同社によると、最近は月に100回以上運行することも多い。福士社長は「仕事をしている人や子育て中の親を応援しているので、少しでも力になれば」と話している。

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